four seasons ~恋人たちの午後~

気の向くままに文字を綴ります。。。

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私の彼は副社長 2-14


『母はね、死ぬ間際まで買収のことを考えていたのよ。遺言が土地だなんてあまりにも酷すぎるわ。母を追い詰めたのは、あなたよ!』
羽並の母の遺影の前で、僕は葉子より罵られていた。
胸が痛い…痛くてしょうがない。それは、己の痛みであり…彼女の心の痛み。僕は、正座したまま彼女の顔を見つめていた。







これが夢であることは、すぐに分かった……そう、今までのことも。
実際あったことが、夢として思い出されているというわけだ。まるで走馬灯のように、目まぐるしく。それからも、葬儀から羽並の店の買収解体、そして、空港での別れまで、僕は観衆のひとりとして、夢の中の映像を見ていた。








「当機は間もなく……空港に到着いたします。只今の気温は摂氏……度、天候は晴れ……」
僕は、そんな機長の声で起こされた。
久し振りの母国、窓に遠く見える滑走路に葉子の面影を見る。
FIE初めての海外進出となるロスの買収も滞りなく終わり、これから予定されている他の国の買収も全て担当のスタッフに任せてきた。
これまでいろんなことがあったが、ようやくこの地に落ち着くことが出来ると思うとホッとする。副社長の仕事は忙しくても、彼女と過ごす時間は以前より増えるのだ。
これからは、彼女が嫌がるくらい一緒に過ごす。毎日のように愛を囁いて、彼女に触れる。いろんなことを考えるとこれからの生活は薔薇色になること間違いなしだった。



はなみ花屋があった土地は今、新しいFIEを建設中だ。
その間、花屋は借り店舗で営業中。僕が以前教育係として入ったFIE支店に小さな花屋を出し、かしましの受付嬢3人と毎日のように仲良くしているらしい……そう手紙に書いてあった。
彼女らは、また昔のように仕事をサボっているんじゃないかと、不安にもなるが。
それだったら、教育のやり直しになるだろう……。














「はい、今到着口を出ました。じゃ、待ち人がいるのでこれで電源を切ります」
携帯電話の中で『おい、真純!!電源切るのか』と慌てる社長がいた。
『お前が、ロスに行っている間、私はずっと……!!』
父の声を、プチンと切る。
「休みなのに、電源入れていたら意味ないじゃないか」
久し振りの恋人との再会。だから、今日は葉子のために丸1日休みを入れていた。それなのに束縛されるなんて、とんでもない。
僕は、鉄の塊と化してしまった携帯にそっとKissをする。たまには気を利かせてください社長…と呟きながら。


「真純さん!」


ざわざわとした到着口に、よく通る女性の声が響いた。もちろん、僕の恋人羽並葉子。ピョンピョンと飛び跳ね大きく手を振っている。
周りの視線も気付かぬ彼女の行動は相変わらずで、まるで子犬のような一途な仕草はとても可愛いいと思えた。
「葉子さん!」
僕は前を歩く人を次々に追い越し、早足で彼女の元へと近寄った。
待ち焦がれた彼女の手を捕まえると、グイッと引き寄せる。ぎゅっと抱きしめると彼女の口から嬉しいと言葉が漏れた。
それは、生で聞く温かく柔らかな声だった。

「久し振り……だ」

彼女の温もりを噛み締めながら、彼女を腕から解放す。
「私達、何年もの間離れ離れになってた恋人みたい。小説のようだわ」
「半年も合わなかったんだ。電話で話すこともさえ出来なかったんだから、当たり前だろ」
彼女は、自宅を失ってから近所の木造アパートに住んでいた。テレビも電話もない生活、連絡はもっぱら手紙のやり取りで。
なのに、葉子の方は冷静だった。僕の心はこんなにドキドキしてるのに。握り合うこの手だって離したくないくらい。それなのに。
「それとも、もっとロスに滞在して欲しかったのかな?1年、それとも2年?もっと小説に近いドラマチックな経験が出来るよ」


だから、ちょっと彼女を困らせてみた。


彼女に思われているってことを、態度で知りたかったのだ。案の定、彼女は頬を膨らませ拗ねた。
「意地悪ね。会いたかったに決まってるでしょう!」
「分かった分かった」顔を反らした彼女を宥めながら、「こっちの買収も全て任せるつもりだから、これからは今まで以上に会えるよ」と言葉を付け加える。きっと、彼女への最高のプレゼントになるだろう。
「ほんと!」
案の定、太陽のように明るい笑顔が弾けた。そして、もうひとつ。
「今日は、誰にも邪魔されることはない。携帯の電源切ったから」
「ええっ!!いいの?」
僕の手を握り締め喜ぶ葉子の姿が見える。きっと、男は女性のこんな姿を見たくて、あれこれと奉仕するんだなと感じていた。
「いいの。僕の身体は1日君のものだ。ご自由にどうぞ」
「きゃ」
普通に言った言葉は、彼女には刺激が強すぎたのかもしれない。顔を真っ赤に火照らせ俯いた。苛めるのも面白い。
「じゃ……じゃあね。私ジェットコースターに乗りたい!」
「ええっ!」
突然の申し出に彼女の手を離していた。僕はいかにも花束とジェットコースターが苦手なのだ。小さい頃妹と乗って吐きそうになったトラウマを引き摺っている。
「ジェットコースター…か」
大の大人が怖いとはいえないし、今日は彼女のために時間を使う予定だった。仕方がない。
「……分かった。じゃ、行こうか」
既に足がすくんでるようだった。だが、気を引き締め彼女の肩を叩いた。
「あっ、それとね。真純さん!」
「何」
次は何?まさか観覧車にも乗るとか言わないよな。
「真純さんも、電話に出れないときは携帯の電源切っちゃう人だったわよね」
「えっ」
葉子は、前に一度そんなことがあったでしょと付け加えた。
どうやら魚住鮮魚店の娘が合コンに行くために電源を切ったらしく、バレて彼氏と喧嘩になったらしいのだ。
「携帯持ってると自由がない。悪いことも出来ないってことね」
「そ、そうだね」



そう、すっかり忘れていた。
僕はあの日、元カノの亜紀と一緒に過ごしていたのだ。そして、僕がいない時にかかってきた葉子の電話を亜紀が切り、着信記録を液晶から消した。
彼女は未だにそんなことがあったなんて知らない。仕事の忙しさで携帯を切ったのだと信じている。
言うべきなのか…。
「葉子さ…」
「なに?真純さん」

でも…。


― よりを戻して……。

― 私……やっぱりあなたが好き。あなたの気持ちを取り戻すように…頑張るわ!


亜紀の言葉を思い出す。罪悪感で胸がチクンと痛くなりながらも、葉子の心に余計な波風は立てたくなかった。
なぜなら僕は、彼女だけを愛しているから。
「葉子さん、もしかして心配してる?」
「そ、そんなことないわよ」
「僕が、この携帯の電源を切るときは」
「エレベーターの中か、山の上でしょ?」
そうそう…。それと。
「酒を飲んで正気じゃない時だ。それ以外は、ずっと繋がっているよ。もし、合コンしたとしても出るから心配しないで」
「えっ?それって合コンするってこと?」
「いや、それはないと思うけど……例えばだよ、人数合わせとかだったら…」
「ええっ!」
そういう集まりでもオープンにするから心配するなと言いたいのに、どつぼに入ってしまった、なんだか場が気まずくなる。
「だから…」
僕は言葉を捜しながら、頬を膨らます葉子を黙らせるために彼女を引き寄せ、唇を塞いだ。周りから僕らを冷やかす声が聞こえたが、構わなかった。
「例えどんな事情があっても、僕は一途に君を思い続けるということ……だから、心配しないで。葉子……」
葉子のうっとりとした瞳が、すぐそこに見えた。僕は掴んだままの彼女の肩に力を入れる。


「愛してるよ」


彼女の瞳がゆっくりと閉じると、再び唇を塞ぐ。

― だから、葉子……。

― 何があっても、この言葉を信じ続けて欲しい


葉子の柔らかな唇の感触をゆっくりと味わいながら、そう心で呟いた。














                                  おわり









皆さま、お疲れ様でした!
次回からは、お待ちかねの恋人編!
ふたりのあまあま、ハラハラストーリーが始まります。(R-15)
お楽しみに。。。
いい男を彼に持つと苦労します。。。頑張れ葉子! 


本家サイト好評連載中の
恋人編(R-15)。。。読んでみる

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まるこ

Author:まるこ
オリジナル恋愛小説を運営する
心の景色を文字にするのが大好きな
管理人。
『春夏秋冬』(R-15)

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目次

私の彼は副社長

登場人物

~出会い編~
1/ 2/ 3/ 4/ 5/ 6/ 7/ 8/ 9/
10/ 11/ 12/ 13/ 14/ 15/ 16/
17/ 18/ 19/ 20/ 21/ 22/ 23/
24/ 25/ 26/ 27/ 28/ 29/ 30/
31/ 32/ 33/ 34/ 35/ 36/ 37/
38/ 39/ 40/ 41/ 42/ 43/ 44/
45/ 46/ 47/ 48/ 49/

~真純くんの事情~
1/ 2/ 3/ 4/ 5/ 6/ 7/ 8/ 9/ 10/
11/ 12/ 13/ 14/

~恋人編~
本家サイトにて公開中(R-15)





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拍手をいただきありがとうございます。皆さんに楽しんでいただけるようこれからも頑張ります!

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