four seasons ~恋人たちの午後~

気の向くままに文字を綴ります。。。

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私の彼は副社長 2-8


「じゃ、行ってくる」


僕は、車に山口を残し小さな路地に立った。
この小さな土地を必ず手に入れてみせる……そう自分に言い聞かせシャツの襟元を整える。
大きく深呼吸をすると心のざわめきは取れ仕事モードになった。まるで戦いに向かう武者のように心の中は鎧で固めて。

「い、いらっしゃいませ」

羽並葉子は僕を見るなり、頬を赤らめ天然記念物でも見るような視線を向けてきた。
それは思ったとおりの好感触で、今まで幾度も感じた事のある熱視線を僕のひとつひとつの動作に向けてくる。男を見るなり、いきなりラブモードのスイッチが入る子も珍しい。中学生の初恋のような単純な仕草に、思わず笑いが噴出しそうになっていた。
「今からお見舞いに行くんだけど、適当に作ってくれるかな」
後は、そのまま会話を続けたらいい。
「女性の方ですか?」
「ああ、高校生の妹が入院してね。そうだな、値段は気にしなくていいから、その淡色のピンクの薔薇を使って仕上げてくれないか……あ、籠はよしてくれ、いかにもって感じで恥ずかしいから」



いかにも花束というのだけは、止めて欲しかった。
昔、母の快気祝いで花束を頼んだ時、籠にこんもりと花を盛り付けられピンクのどでかいリボンを飾られた事があるのだ。当時学生だった僕は周りから好奇の目で見られるわ、自転車の前籠にも入らず、四苦八苦するわ、最悪の状況だった。
その後、必要性に迫られて作ってもらった花束も、仰々しすぎて花屋に置いてきてしまった。
花屋のセンスなんてどこでもそんなものだと思っている。
果たして、いかにもという僕の注文に、彼女がどこまで答えてくれるか……ちょっぴり楽しみであった。


「そうですね」


店主は、腕を組み首を傾げ、花で溢れんばかりのショーケースを眺め始めた。花に目を向けた彼女の瞳は、仕事モードに変わったようで、宝箱を見つめるようにキラキラと輝き出した。


「……じゃ、淡い系のピンクと白薔薇を使って、ちょっとアクセントにイングリッシュアイビーとスプレンゲリーで。和紙で包めばいい感じです」


彼女はそう言うと、人が変わったようにテキパキと動き出した。
テーブルに和紙を広げ、裁ちバサミでスッと切ってゆく。見事な裁ちさばきに見とれているといつの間にか選ばれた花達がドサリと僕の足元にあったバケツに入れられた。
もう、彼女の視界には僕の姿など入っていないようだった。花のアーティストと名づけたいくらいに彼女の小さな手の中では花が踊っている。無造作に束の中に差し入れられてゆくようにも見える1本1本の花は、最終的には計算しつくされた彩の中に収まっていった。



「いかがでしょうか」


彼女はそう言いながら、花束に薄い緑の紐を巻きつけて僕に手渡していた。リボンの代わりに施されたその紐は目を揃えて編み込んであり、四つの凸凹が、センスよく花束をまとめていた。良い仕事をしていることがその花束全体を見てすぐに分かった。
「へえ、もっと派手なリボンで結ばれると思ったけど、紐で結うというのもお洒落だね」
これは、本音トークだ。アレンジメントの意外な取り合わせ、柔軟なセンスの持ち主に頑固者というイメージが少しばかり崩れる。
「そう思って、手芸などで使われる紐結びであしらってみました。紐自体は特殊なものを使っているので、高級感は十分に出ていると思います。ちなみに、これは四葉のクローバーをモチーフにしてます」



ああ、なるほど。飾りだけじゃなかったんだ……僕は、彼女からその珍しい紐に視線を落とした。
薄い緑の紐で細かく編み込まれた紐結びをまじまじと見ながら、彼女の器用さと人の心を上手く掴んだ感覚に胸が震える。
闘病生活をしている患者は、誰しも辛さを抱えている。さり気なく飾られた幸せを願う四葉のクローバを見て悪い気を起こす人間なんて、どこにもいないだろう。
だって、彼女から受け取った僕でさえもなんだかワクワクとした気持ちになっているのだから。
「幸せの四葉だね」
と言って僕は、彼女を再び見つめた。
彼女はパッと頬を赤らめ僕を見返す。その時間は短いはずなのに、なんだか長く思えた。
「はい、妹さんが元気になられますよう思いを込めてます」
「ありがとう。いくらかな」
「税込みで6000円です」
「それでいいの?花束にしては大きくて結構いいもの使ってあるような気がするけど」
花の相場を調べていた僕は、この値段に愕然とする。仕入れ値にちょっと気持ちを足した値段。こんなんで借金を返そうだなんて、とんでもない話だ。人が良すぎるのか、計算が出来ないだけなのか、現実が分かっていないのか…身内だったら今頃説教だ。
そんな思いも彼女は気がついていないだろう。全く暢気な奴だった。
そんな暢気な彼女は、屈託ない笑顔を僕に見せた。
「はい、よろしければまたいらしてください」
説教する気も失くすほど、彼女の瞳はひたむきだった。


「ありがとうございました」


僕は、花束を持ち花屋を後にした。
「なんだかやりにくいな……」
それが、羽並葉子の第一印象だった。








第9話







ようやく葉子との絡み。。。お待たせしました♪






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目次

私の彼は副社長

登場人物

~出会い編~
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~真純くんの事情~
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11/ 12/ 13/ 14/

~恋人編~
本家サイトにて公開中(R-15)





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