four seasons ~恋人たちの午後~

気の向くままに文字を綴ります。。。

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私の彼は副社長 2-5

「前のはなみ花屋の嬢ちゃんとは、会ったんですかい?頑固な嬢ちゃんに買収の話をしに来たんでしょう」



定食屋の店主は、食べ終わった食器を片付けながら、答えを返さない僕を覗き込み詮索を始めた。最終的には金の話になり、『買収が進むように彼女にはもっと金を出すんでしょ』と勝手に話を膨らませてゆく。そんな店主の興味深げな視線を無視し、窓の外に視線を移した僕は、誰もいなくなり火が消えたように寂しくなった花屋の店先を眺めていた。
「まぁ、でもね。若いのにあんな売れない店の犠牲になって。可哀想な娘さんではあるんですよ」
「犠牲?」
店主は、僕が反応したのが嬉しかったのか得意げに話し始めた。


羽並の父親は、花屋に婿に入ってからもトラブルの種だった。
店を手伝うこともなく、ギャンブルや女癖が悪くて借金ばかり作り、娘が産まれて収まるかと思えば、酒びたりの日々で。結局は、三行半を押されて出て行ったきり、行方知れずになった。
借金は、小さな花屋の経営だけで返せるはずもなかった。また、商店街の不景気で額も膨れ上がり……。
「母親も5年前に癌を宣告されて、で1年前に再入院。親戚の看護師から聞いた話あちこちに転移しているらしくて、先は長くないらしいんですよ。あの嬢ちゃん元気がいいから、そんな風には見えないんですけどね」
「母親が死んだら天涯孤独の身」そう付け加えると、定食屋の店主はカウンターの中へと消えてゆく。

「そんなこと、他人に話すもんじゃないだろう…」

花屋を見つめながら心に溜まった淀みを吐き出していた。
「あの親父も、不幸事の噂を流して楽しんでいるようにしか見えないな」
この商店街を担当して分かったこと。
それは、薄っぺらな絆で結ばれているということだった。
土地の買収に応じた商店街の店主たちは、口々に買収に応じない3軒の店の悪口や噂を、告げ口のように話したのだ。
一番人間的だと思ったのは、はなみ花屋とともに買収を拒否する店主たち。それぞれが自分の店に誇りを持っていて、もちろん買収に応じた店の悪口なども話すことなく……。

「団結力のないこの商店街に、未来はないようですね」

僕の言いたいことを代弁してくれた山口に視線を戻した。
「そうだな……これで、遠慮なく頂ける」
花屋の店主には悪いが、このまま経営を続けても倒産は免れない。まだ価値が残っている状態で、FIEが買収することが彼女のためになることだった。花屋が首を立てに振れば、残り2件の店も自然と手に入る。
あの自殺した老夫婦と同じ人生を歩まないためにも、成功させなければいけないのだ。
「山口、一度FIEに戻ろう。着替えて乗り込む」
こう焼魚臭くては、仕事にもならない。
「親父、つりは要らないから」
立ち上がりテーブルに札を置くと、僕は店を出たのだった。








「こんにちは、恩田ですが……」
ここは本社よりふた駅のFIE。
受け付け前に立つまで私語を続ける受付嬢がいる。僕はカウンターに手を着くと、彼女ら3人をひとりひとり見つめた。
「入会手続きは2階となっております。私がご案内…いたっ、ちょっとどうして足を踏むのよ」
「どうぞ、こちらへ。私がご案内いたします」
ここからは見えないが、カウンターの下では客取り合戦の激しいバトルが繰り広げられているようだった。勝利者は、意気揚々カウンターより姿を現す。

「恩田様」

漫画で言えば語尾にハートマークでもついているような声色に驚き、結局、自分がFIE関係者だと言えぬまま、2階へと連れて行かれることになった。
エレベーターの中に入ると、施設の案内が始まった。
かなり個人的感情が入った熱い案内となったが、その説明は完璧なもので、大手百貨店のインフォメーションから引き抜いたという社長の自慢の意味が分かったような気がした。

「入会手続きは、こちらのカウンターとなっております」
「あ、ちょっと…」
エレベーターを降りて案内を終えた受付嬢に、僕は声をかけた。彼女は、少し頬を赤らめながら夢でも見ているような瞳を僕に向けた。
「君……本田さん?施設の説明は分かりやすくて凄く良かった」
「あ、ありがとうございます!」
褒められた嬉しさに嬉しい悲鳴を上げんばかりに喜ぶスタッフ。だが、その後付け加えた言葉に彼女の顔色は変わりはじめた。
「だけど、客が見えた時点で私語を止めて欲しいのと、客の用件を聞いてから行動を移すこと、あとは、挨拶を忘れないように残りのふたりにも伝えてくれ」
「はぁ……」
彼女は、初対面の客からあれこれと注文をうけたことがよっぽど嫌だったらしく怪訝そうな目つきで見返してきた。
「受付に来た客が、全て入会手続きだとは思わないほうがいい。道を聞くだけなのかもしれないし、僕みたいにFIEの関係者かもしれない」
「関係者…恩田さ…あっ」
ようやく、ことの意味が分かったようで彼女は大きく息を吸い掌で口を隠す。
「ふ、副社長!申し訳ありません」
「好感の持てる笑顔と完璧な説明、それに今のことをやってくれればこの支店のイメージアップに繋がる。これから……期待してるよ。本田さん」
「は、はい!!」



実は、僕にはもうひとつの指令があった。
隣駅前の土地買収をすると同時に任されたのが、この支店に勤める社員の教育だった。お客さまアンケートでもワーストに入る支店で、支店長の教育を任されたのだ。
僕は、FIEの制服でもあるパープル色のジャージをきたスタッフが待機するカウンターへと向かって行く。すると、名前を呼ばれた。



「真純くん!」


忘れもしない懐かしい声に、僕は振り向いた。
そこには、半乾きの髪をひとつに上げた亜紀の姿があった。








第6話














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目次

私の彼は副社長

登場人物

~出会い編~
1/ 2/ 3/ 4/ 5/ 6/ 7/ 8/ 9/
10/ 11/ 12/ 13/ 14/ 15/ 16/
17/ 18/ 19/ 20/ 21/ 22/ 23/
24/ 25/ 26/ 27/ 28/ 29/ 30/
31/ 32/ 33/ 34/ 35/ 36/ 37/
38/ 39/ 40/ 41/ 42/ 43/ 44/
45/ 46/ 47/ 48/ 49/

~真純くんの事情~
1/ 2/ 3/ 4/ 5/ 6/ 7/ 8/ 9/ 10/
11/ 12/ 13/ 14/

~恋人編~
本家サイトにて公開中(R-15)





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