four seasons ~恋人たちの午後~

気の向くままに文字を綴ります。。。

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私の彼は副社長 2-7



「真純くん……愛してる」



「僕もだ……亜紀」




長い悪夢を見ていたのかもしれない。
僕らの仲は今でも変わらず続いているのに、どうして彼女が他の男と結婚するなんて夢を見てしまったのだろう。
僕は彼女の白い腕に手を伸ばした。自分の元に引き寄せるために。




プルルルル……!!



突然、ふたりの仲を断ち切るような電話の音に全身がびくりと揺れ、目を開けた。全てが夢であったことを目の前に見える紫檀の天井で気付く。それは、ホテルの寝室で。


「はい……亜紀?」


覚めない頭を振りながら、僕は受話器に話しかけた。
その奥から繰り返し流れる英語のモーニングコールは、一気に脳を目覚めさせ、現実を突きつけてくる。そして、なんともいえぬ空しさがこみ上げてきた。
「馬鹿だなぁ……未練タラタラじゃないか」
鉛のような身体を起こし室内灯をつけると、紫檀で統一されたアジア風の室内を今一度確かめるようにゆっくりと見回した。
頭にはズンと重く圧し掛かるような痛みがある。
二日酔いだ。
そう言えば、亜紀から結婚宣言を突きつけられた僕は、凄いショックを受けた。FIEでの顔見せが終わったあと商店街にも寄ることなく、ホテルのバーへと向かったのだ。迷惑だったのは山口だろう。無理矢理付き合わされ、酔っ払いの面倒を見させてしまったようだった。
その名残として、ベッドサイドのテーブルにはOFFになった携帯電話と彼からの手紙が残されてあった。

― 緊急連絡は、私が受けますのでゆっくり休んでください。
                        山口

普段、深夜まで営業する各地のスポーツクラブのトラブルを把握するため携帯電話は常時取れるようにしている。それをOFFにするときは、病院に入院するか山の頂上にいる時。
その電話を切られたということは、電話の対応が出来ないほどに、正気を失っていた事を表していた。
「あぁ…」
ぐでんぐでんに酔っ払い、愚痴を話す自分の姿が思い浮かぶ。
自分の不甲斐なさに頭をくしゃくしゃと掻き毟る事しか出来なかった。




『仕事と私どっちが大切なの!』




雨音のようなシャワーに混じり、あの時の亜紀の悲痛な声が聞こえてくる。
長期出張のために千キロの遠距離恋愛になったふたり、結局は心のすれ違いを起こし別れたのだ。



冷たい雨が降るクリスマス。大切なのは君だと伝えていれば未来は変わっていただろうか。
彼女だってこの究極の選択に本音を求めていたのではなかった。ただ、結婚が進まぬあの頃の状況に苛立ち感じ、愛を再確認したかったのだ。だが、僕はその意味を理解してやることが出来なかった。とんぼ返りでも恋人に会いに帰って来ること自体が、十分な愛を見せているのだと勘違いしていた。
『君は大切だ。だけど、それと同じくらいに仕事も大切なんだ』
『でも、あなたは仕事ばかり優先してる。今年私とあなた何時間一緒に過ごしたか分かる?42時間よ!』
巷の恋人より、はるかに少ない時間だということぐらい分かっている。責められているような気がした。恋人を省みない男なんだと。
『じゃあ、どうしろというのか?副社長なんか辞めてサラリーマンでもなれって言うのか?それともフリーターか?僕は、少ない休みを精一杯君に使っているつもりだ。それでも駄目なのか!』
『駄目よ!会いたいときにあなたはいない』
喧嘩腰になっていた。お互いが意地の張り合いで、そして、彼女はふれてはいけない言葉を発してしまった。会いたいときに会う環境など、今の立場の僕には出来ないことだった。
『だったら、近くにいてくれる恋人でも探すことだな』
興奮している彼女にお灸を吸える目的で言った言葉。だが、それが禁句だということに気づいた時は後の祭りだった。
パチンと乾いた音がした後から左の頬に灼熱感が走った。
彼女から思いっきり叩かれたということが分かるまでに、結構時間を要したような気がする。


『分かったわ。そうする』


別れの言葉も言い合っていない。
それが本当のさよならだと知ったのは、彼女が携帯の番号を変えたときだった。







「あ、母さん。連絡もせずにごめん…帰るのは、夜中になりそうだよ」
出張先からFIE本社に戻り、結局はあんなことがあってふらりとバーへ。
ONにした携帯で心配しているであろう母へと電話するとやっぱり怒られた。
「えっ?真美の病院は今日行くつもりだけど……。お見舞いは花束がいいって?そんな催促するくらいなら、元気はいいみたいだね」
妹の真美は、季節の変わり目になると喘息の発作に襲われる。
今年は、来年の大学受験のために受けた塾の夏期講習の疲れが残っていたようで大発作を起こしてしまった。
一番辛い時期に真美のそばにいてやれない。亜紀の立場と重なり、胸が苦しくなる。
「花束は、途中の花屋で作ってもらうよ。じゃ。……ああ、分かってるさ。無理はしない」
仕事ばかりしていると身体にも悪いし、女性からも煙たがられる。そんなことを切り際に言われてしまった。



母との電話を終えた僕は、テーブルに携帯を置くとクローゼットを開いた。
広すぎるスペースには、クリーニングのカバーに包まれたスーツ、そして、私服が並んでいた。
魚臭かったスーツを見ると亜紀や母とのやり取りを思い出す。


― 結婚するには最適な人だと思うわ。

― 仕事ばかりしてると……煙たがられるわよ。


「……仕方がないじゃないか。これが僕の選んだ道なんだから」
母が倒れ、半身麻痺になったのをきっかけに思い立ったスポーツクラブ、それを父が形にするまでさほど時間はかからなかった。健常者や身体に障害を持つ客のためにさまざまなプログラムを作ったことで客足は増え、各地に支店も増やした。
だが、それで満足することは出来ない。
気軽に通える施設を造るには、まだまだ資金も土地も必要なのだ。
そのためには、不眠不休で頑張るしかなかった。



僕は、スーツに伸ばそうとした手を止めた。一瞬躊躇するが私服を取り出す。腕に袖を通し、ドレスシャツのボタンを留めてゆくと、脳裏に花屋の店主羽並葉子の顔が浮かぶ。
スーツ姿で門前払いされるのなら私服で会えばいいと言う考えが浮かんだ。
同じ交渉台に引き摺り上げる、そのためだったら卑怯なやり方だと罵られても構わない。
結局は彼女の生活のため、そしてFIEの目的を知ってもらうためだった。









第8話














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目次

私の彼は副社長

登場人物

~出会い編~
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~真純くんの事情~
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11/ 12/ 13/ 14/

~恋人編~
本家サイトにて公開中(R-15)





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