four seasons ~恋人たちの午後~

気の向くままに文字を綴ります。。。

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私の彼は副社長 47

 

強く握られた手……。
見つめ合う私達の間には、甘くゆったりとした時間が流れていた。
だが、そのつかの間の時間は、社長の咳払いで消え去ることとなる。ひとりぼっちになった掌は、まだ、彼の体温を求めているような気がした。
「……じゃ真純。お邪魔のようだから帰るぞ。イチャイチャするのは構わんが、病室だということを忘れずにな」
「父さん、何を考えているんです?」
社長は、豪快に笑うと踵を返す。頬を色づかせている課長の背中を押すように、ふたりは病室より出て行った。









真純とふたりきりになった。
相変わらず流れ出る涙をハンカチで拭いていると、彼は私の名を呼び、空いたほうの手で枕の端をトントンと叩いた。
「ならば、社長の期待に沿うことにしようか……どうする?ベッドに潜り込んでみる?」
「えっ!」
「なんて、嘘だよ……枕に頬をつけてごらん」
「う、うん」
場所が場所だけに布団へ潜り込む事は出来ないので、真純に言われるがまま、私は半分空いた枕のスペースに頬を乗せてみた。フカフカの枕はふたり分の重さに負け深く沈む。

端整な顔立ち、茶色い瞳の彼を、すぐ目の前に見た。

かっこいいと思う。ホントに…。
まじまじと彼の顔を見ていると、いつの間にか涙は引いてしまい、鼓動を早める心臓の音だけが耳に飛び込んでくる。
それで、ようやく気がついた。
これは、私の涙を止めるために真純が考えてくれた行動なんだと。
「実は、病院の寝具って苦手なんだ」
その思いは、正解だったようだ。
真純は、次の行動を起こすことなく話を続けた。
「どうして?」
「糊が利きすぎて、いかにも病人って臭いがする」
「だから、ラッシュを吹きかけているのね」



ずっと気になっていたのだが、この真純の寝具は、彼の香りで包まれていたのだ。それも、かなりきついもの。
「そう。父に頼んだら、いきなり布団に向けてガンガンかけられたんだ。お陰で、眠っててもこの香りが夢に出てきた。ちょっと引くだろ」
寝具の糊の匂いに混じり、強く香る真純のラッシュ……だけど。
「でも、あなたを強く感じれるわ」
「葉子…さん」
意外な返事だったようで、真純は恥ずかしそうに笑みを浮かべた。
強すぎる香りでも、好きな人なら許される……このまま彼のそばを離れたくない、この香りにずっと包まれていたいと願った。






「どうして、FIEの成り立ちを知っていたんだ?」
他愛も無い話が終わると、彼は、本題に入った。
真純は病室の真っ白い天井をジッと見つめ、私の頭を撫でながら優しく問いかけてくる。
私は、全てを話した。

母の日記のこと。

私宛の手紙のこと。

それで、真純も安堵したのかもしれない、笑みを浮かべながら大きく息をついた。
「そうか……、あれからずっと気になっていたんだ。僕の出現は、おかあさんを苦しめただけじゃないのかと」
その日、母に会うつもりは無かったのだと真純は言った。
母の部屋の前を通ると、看護師たちよりお祝いされている声が聞こえてきて、母が花束を欲しがっていたことを思い出すと、いても経ってもいられなくなり、渡してしまったのだと話した。

「あの花束は、君が作ったお母さんのための花のような気がしてね。誰にも渡せないと思ったんだ」

母は、その花束を見て本当に喜んでいたそうだ。
お礼に何か返したいが、返すものが無いと嘆く母に、『お母さんの笑顔だけで十分です』と答えた。
真純にとっては当たり前に出てくる言葉も、母にとっては免疫ない事で有頂天だったに違いない。図に乗った母は真純にこう言った。
『真純くんと葉子は、正式な恋人なのよね?』って。
あとは、手紙の中で綴られていたとおりだった。




「私、そんなことも知らずにあなたへ酷いことばかり言った。ごめん、本当にごめんね」
言おう言おうとしていた言葉が、ようやく出た。
嫌な奴だと思ったわよね……そう付け加えると、頭を撫でる彼の手がピタリと止まる。
真純は、無言のままだった。
彼の答えにドキドキしながら、目の前に見える彼の顔を見つめると、真純も天井に向けていた視線を私へと移してくれた。二重に見えそうなぐらいの距離はさらに縮み、額にキスを落とされる。
懐かしい彼の唇の感触は、額から神経を這うように、心地よい刺激として全身に伝わっていった。

「嫌いになれれば、どんなに楽だろうと思ったよ」

彼の手に力が入り、引き寄せられていた。
がっしりした真純の首に、枕から外れた私の顔がすっぽり収まる。スッと浮き出た首筋の筋肉に肌が当たると、抱きしめられているような錯覚に陥って、顔が火照ってきた。
「それが出来ないから、仕事に明け暮れた。風邪をおして頑張ったら、こんな結果になった。呆れるだろう」
彼の変わらぬ思いが伝わってくる。嬉しくてホッとして、また癌騒ぎを思い出し胸が詰まった。
「バカ……。本当に心配したのよ」
私は、真純から顔を離した。
彼が騙したわけじゃないのだが、騒がせた罰として頬を膨らませ軽く睨みつける。
「あなたまで失いたくない。もう、無理だけは絶対しないで」
申し訳なさそうに眉を下げた真純は、ゆっくりと頷いた。
「分かった…約束する。これ以上好きな人に心配はかけられないからな」



真純と絡まった視線を、切り離せなくなっていた。
優しく甘い視線に包まれてゆく。
ある種の艶やかな雰囲気に答えるように、私は目を閉じ彼のキスを待つことにした。

「風邪がうつっても、知らないからな」

パサリと衣擦れの音が聞こえてきて、彼が行動を起こし始めたことを悟る。
「構わないわ」
「変な体勢で、点滴が漏れそうだ」
頬に手を添えられ、彼の息が口元に当たる。
「私に心配かけた罰だと思って」
「困ったな、じゃ、これで許してくれ」
待ち焦がれた彼の唇の感触を、私の唇で感じた。
温かで張りがありしっとりとした彼のキスに、最大の喜びを感じる。
今までのたくさんの悲しみや不安は、そのキスで浄化されたような気がしていた。















真純の退院後しばらくして、延期されていた最後の説明会が行われた。副社長から買収完了の報告と、これからの解体作業からFIEの建設工程の簡単な説明が行われる。既に、FIE周辺の土地開発も決まったようで、あの寂れた商店街は病院や専門学校などの施設にはや代わりする予定となっている。はなみ花屋の解体作業も1ヶ月後、真純の渡米前に行われることになった。

そう……、考えまいとしていた現実が露にされた。

彼は、新たな目標達成のためロスへと飛び立つのだった。









 第48話へつづく






すごく、すごく、すご~くお待たせしました(滝汗)
身辺が多忙すぎることと、思うように文章が書けない事
それが理由です。。。
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(かなりの確立で更新の後押しとなりそうです。。。笑)
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コメント

楽しみっ♪

こんにちは☆
いよいよ次回は出会い編の最終話なのですね!楽しみです!
でも、真純さまがロスへ???
じゃぁ、恋人編は大海をまたいだ遠距離恋愛になってしまうのですか!?
♪離れた時間がぁ~愛育てるのさぁ~♪
by ヒロミ・GO
(あ~、歌詞うろ覚え・・・というか、年バレるぅ~)
まるこさんも、いろいろとお忙しいようですね。
私もここ2週間ほど、何故か集中的に忙しくて更新サボってます。。。。
今週末か来週明けに更新の予定です。
これから梅雨入り、天候に惑わされずシャキッといきたいもんですね。

ありがとっ♪

こんにちは、zaziさん♪

そうなんですよ~~。次回は、惜しまれながら!?の最終話です(笑)きっと、また高飛びかい!!と突っ込みを入れられた人も多いかと思うのですが(笑)ちょっと今、ふたつの終わり方のどちらにしようか悩んでいます。。。大海をまたいだ遠距離恋愛も捨てがたいなぁ。。。う~ん。

zaziさんも忙しいみたいですね~。そうそう、忙しいときってなにかと集中しますよね。私も忙しく、つい先日なんて昼食が午後3時。。。PC開いても白目向いて寝てたりしてて(笑)まともな文章がかけないから、更新もノロノロペースです(涙)

お互い、早く執筆に専念したいものですね~。そのためにもシャキッシャキっと頑張りましょうね~☆

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まるこ

Author:まるこ
オリジナル恋愛小説を運営する
心の景色を文字にするのが大好きな
管理人。
『春夏秋冬』(R-15)

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目次

私の彼は副社長

登場人物

~出会い編~
1/ 2/ 3/ 4/ 5/ 6/ 7/ 8/ 9/
10/ 11/ 12/ 13/ 14/ 15/ 16/
17/ 18/ 19/ 20/ 21/ 22/ 23/
24/ 25/ 26/ 27/ 28/ 29/ 30/
31/ 32/ 33/ 34/ 35/ 36/ 37/
38/ 39/ 40/ 41/ 42/ 43/ 44/
45/ 46/ 47/ 48/ 49/

~真純くんの事情~
1/ 2/ 3/ 4/ 5/ 6/ 7/ 8/ 9/ 10/
11/ 12/ 13/ 14/

~恋人編~
本家サイトにて公開中(R-15)





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拍手をいただきありがとうございます。皆さんに楽しんでいただけるようこれからも頑張ります!

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