four seasons ~恋人たちの午後~

気の向くままに文字を綴ります。。。

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私の彼は副社長 46


「お願い」


私は、説明会に間に合うよう心の中で祈りながら走っていた。こんな時に限って信号にぶつかり、イライラしながら青になるのを待つ。すると横断歩道の向こう側に商店街の人たちを見つけた。
地主の人ばかり……それはもう、説明会が終了したことを意味していた。


「おばさん!」


多美子の姿を見つけた私は、信号が青になると同時に飛び出していた。驚く彼女の腕を掴み、息を荒げながら訊ねる。
「副社長は…真純さんは、白紙だと言ったんですか!」
「いえ、それが……あいつ、倒れたのよ」


「えぇっ!」


真純は、説明会の会場で急に倒れ救急車で運ばれたのだ。
「あいつ、働きすぎなんだよ。あんなことがあってから、自分を追い詰めるように働いていたらしい。顔色は悪いし、意識も朦朧としてたし。大丈夫かしら」
「朦朧と……」
結局その騒ぎで、説明会は延期になったとのことだった。ちょっと安心しながらも、運ばれた真純のことが気がかりで。
「病院は?」
「分からないけど、救急病院といったらあんたの母親が入院していた所しか考えられない」
「私、行ってきます!」
「ちょっと、FIEとはもう関わらない方がいいって言ったじゃないの!」
まだ、葉子の心変わりを知らない多美子は、両手を広げて制止しようとする。その多美子の腕を下ろしながら言った。
「母は、土地なんかに執着してなかったの」
バッグから、母の手紙を出すと、読んで下さいと彼女に手渡す。
「母は彼の事が大好きだった。そんな母を、真純さんは身内のように大切にしてくれてたんです」
私は、そう言うと踵を返していた。彼が入院しているかもしれない病院に行くため、駅へと向かったのだった。









真純は、一旦救急病棟に移された後、内科病棟に入ったのだと受付の女性から聞いた。さっそく、エレベーターから三階の内科病棟へと入り、ナースセンターで聞いた部屋番号へ向かう。どうやら個室、一番奥の部屋だった。
部屋の前の廊下では、葉子の担当だった課長と、お葬式でチラッと見たFIE社長がなにやら深刻そうな顔で話している。彼らは、私の出現にも気がつかないまま話をしていた。





「……それで、病名はなんだったんですか?」
「大腸癌だそうだよ。あちこちに転移していて余命は半年、ドクターから、残りの余生は好きなことをさせてくださいって言われた」
「そうだったんですか……。あまりにもやせ細っていたからですね。何か重い病気ではないかとは思っていたんです。可哀想に……」



― 大腸癌……。



真純が、大腸癌。
私は、全身の力が抜けそうになっていた。それも転移していて余命は半年だと……。母に続いて真純までもが、私の元を去ってゆくなんて…と愕然とした。
課長は、私の存在にようやく気がついたようで、深々と礼をする。それを見て、社長もゆっくりと振り向いた。
「君は…はなみ花屋の」
社長から声をかけられ、慌ててぺこりとお辞儀する。
「羽並葉子です。母のお葬式の時には大変お世話になりました」
母の葬式の時、一番大きい生花を飾ってくれたのは、FIEだった。
社長と副社長連名での生花は、質素な祭壇を華やかにしてくれて。
「葉子くん。この度は、息子がとりかえしのつかないことをしてしまって、申し訳なかった」
社長は、本当に胸を痛めているようで、右手を胸にあて深々とお辞儀をする。私は、そんな社長に頭を上げるように言った後、ごめんなさいと謝った。
「副社長が私の母のこと大切にしてくださったのは、プライベートな気持ちからだったことだと今頃になって分かりました。私は、彼に酷いことばかり言って傷つけて……今更、だとは思いますが、息子さんに会わせてもらえませんか?」
社長は、真純と同じ形の瞳を細めながら目尻に皺を寄せ微笑み、『どうぞ』と言ってくれた。








無機質なコンクリートの壁。
その部屋の中央に置いてある真っ白なベッドに、真純は横になっていた。
微動たりともせず眠っている真純に私は近づき、布団から出ている彼の手を握る。点滴で繋がれた白過ぎる肌に、彼の病気の重さを見せられたような気がしていた。

「真純さん」

呼びかけるも、反応は無い。だが、葉子はそのまま話を続けた。
「母に生きる希望を与えてくれてありがとう……。あなたが言ってくれた言葉のお陰で、母は歩けることを夢見て、幸せな最期の時間を過ごしたの。母はね、あなたが大好きだったみたい。あなたの存在がプレッシャーだなんて、そんなこともなかった。母はただ、私のアレンジの腕をあなたに託したくて、土地を売るよう言葉を残したのよ」

ねぇ……私は、眠り続ける真純に声をかけた。

「癌なんかに負けないで……。あなたが中学生の頃、お母さんのために立ち上げたFIEなんでしょう。身近に利用できる支店をもっと増やさなきゃいけないんでしょう。だから、頑張って生きてよ……羽並の土地もあげるから」
話しながら、涙が出てきた。
社長の呼びかけにも答えきれないぐらい、ショックを受けていた。
「あなたまで、私を置いて逝かないで」
その時、握っていた真純の手が動き、私の手を掴んだのだ。



「勝手に殺すな……」



真純は、横になったまま充血した目を私に向ける。視線が合うと、穏やかに微笑んだ。
「僕は、癌なんかじゃないぞ」
「え?だって、大腸癌だと」
後ろにいる社長を振り返る。社長は、笑いを堪えていた。
「葉子くん、それは、飼い犬のらん丸の話しだ。真純は、高熱からくる脱水症状だそうで、明日には退院できる」
「らん……まる?」
「笑って、すまない。でも、君は真純が言ったそのまんまの人だと思ってね。人情厚くて、すぐ周りが見えなくなるけれど、何事にも一生懸命で好感が持てる人だ」


なんだか、腰の力が抜けてしまった気がした。


へなへなとベッドサイドに座り込む。真純と繋がった手は、ぎゅっと握り締められた。









第47話へつづく






下の拍手は、なんなんだぁ~?
つけた覚えが無いのが、また怖い。。。



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(かなりの確立で更新の後押しとなりそうです。。。笑)
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コメント

良かった!

まるこさん、お邪魔しております。

葉子さんと真純さん、ようやく良い雰囲気になってきましたね。
今までずっとハラハラドキドキだったので、今の二人のほのぼのとした場面を見ていると、心の底から良かった……と思います。
えっ、真純さんが癌? と私も慌ててしまいましたが(笑)
次回更新もすっごく楽しみです!

あ、この拍手ボタンって、新しい機能のようですね。私も最初に見た時、「これは何?」と思ってしまいましたv

トイ子さ~ん♪

きゃ~☆ご訪問ありがとうございます!
そうです、そうです。ようやく、出会い編では、落ち着いたかな~~という感じです(笑)癌に関しては、真純のイメージからかけ離れた感じのものを選びました~。病気にさせられたらん丸ちゃんには、ごめんなさい。。。という思いですが(涙)

実は、この展開、最初のプロットとは、全く違うものになりました(本当は、説明会に乗り込んでうんぬん・・・と考えていた)が、こっちの方が純愛っぽくてよいかなと。。。思ってさせてもらいました。
上手くいって次回、長くなっても後二話で、ひとまず出会い編は終わりです。
次回も楽しみに待っててくださいね~☆

拍手ボタン。。。私もようやく分かりました~。嬉しい機能ですね~~。また遣り甲斐がUP♪♪(強いて言えば、拍手の状況を一目で見れる管理用が欲しいかも~~)

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まるこ

Author:まるこ
オリジナル恋愛小説を運営する
心の景色を文字にするのが大好きな
管理人。
『春夏秋冬』(R-15)

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目次

私の彼は副社長

登場人物

~出会い編~
1/ 2/ 3/ 4/ 5/ 6/ 7/ 8/ 9/
10/ 11/ 12/ 13/ 14/ 15/ 16/
17/ 18/ 19/ 20/ 21/ 22/ 23/
24/ 25/ 26/ 27/ 28/ 29/ 30/
31/ 32/ 33/ 34/ 35/ 36/ 37/
38/ 39/ 40/ 41/ 42/ 43/ 44/
45/ 46/ 47/ 48/ 49/

~真純くんの事情~
1/ 2/ 3/ 4/ 5/ 6/ 7/ 8/ 9/ 10/
11/ 12/ 13/ 14/

~恋人編~
本家サイトにて公開中(R-15)





拍手御礼!

拍手をいただきありがとうございます。皆さんに楽しんでいただけるようこれからも頑張ります!

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