four seasons ~恋人たちの午後~

気の向くままに文字を綴ります。。。

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私の彼は副社長 44


「今年に入って、なんだか客が多いわね。こんなに来るのって凄く久しぶりじゃない?」
正月明けそうそう、風邪で仕事を休んでいる詩織は、なぜか人の家に転がり込んでいた。彼女の言うとおり、今年になってからの花屋は客入りがよく、今日だって午前中だけで20人ほどの客が来ている。
「葉子、なにか宣伝した?」
「するわけないじゃない。お金ないのに」
「そうよね。変ね」
確かに変だった。
宣伝もなにもしていないのに、客が増えるだなんて普通ありえない。一体何が起こったとでも言うのだろうか。
「でも、ありがたいじゃない。きっと、天国のお母さんが導いてくれているのよ」
「そうなのかな」
もしかしたら、母は命と引き換えに神様に願ったのかもしれない。はなみ花屋を立て直してくださいって。



だが、その理由を知ったのはその夜のことだった。
閉店準備の中飛び込んで来たのは、なんとFIEの受付嬢たちで。
「よかったぁ、間に合ったわ。羽並さんアレンジ作ってください」
「は、はい!」
私のアレンジを絶賛してくれた人たち。あの時は、真純から店を教えてもらえないと言って嘆いていたのに、どうして分かったのだろう。
彼女らは、相変わらずハイテンションだが、場が急に明るくなった。
「私は、この花を使って欲しい。小さなウエディングブーケみたいなイメージで」
「あなたには、菊よ。私がブーケ」
「ふたりとも彼いないでしょう。創ってもらうだけ寂しいわよ。私は、紅い薔薇で、副社長が送別会で渡していたやつ。値段は半値しか出せないけど」



コントのような会話が耳に入る。
私は笑いを堪えながら、少し時間かかりますよと言い、それぞれの好みと値段にあうアレンジを作っていった。
「みなさん、店を探すのに大変だったでしょう?こんな辺鄙なところまで来てくれてありがとうございます」
私は、アレンジをひとつ作り終えると次のアレンジのための花を選び出す。
「何言ってるんですか。大変なんかじゃなかったですよ。今年になってようやく、副社長が花屋の場所を教えてくれたんです。よかった来れて」




「副社長が、場所を?」
私は驚いていた。
もしかして、最近の客入りと関係あるのかも知れないと気付く。
「ええ。副社長が多忙の時は、羽並さんの花が手に入らなかったんです。花を絶やすことも出来ないので、仕方なく近所の花屋に代わりの花を頼んだら、クラブのお客様が『どうして花屋を変えたの?』って、話を聞いてみると凄く気に入ってくださってたみたいで……だから、興味を持っていただいていたお客様には、場所をお教えしたのです」
 



ようやく客が増えた訳が分かった。
真純が受付嬢に伝えた一言が、あっという間に噂で広がったのだ。


― 7日過ぎたら無理してでも店だけは開けてくれ。きっと仕事が、癒してくれる。


彼は身をもって、口コミだけで客が広がることを証明してくれたのだ。
彼の声が聞こえてくるような気がした。
一番大切なのは、客を満足させるその腕なんだと。この腕を多くの人に知ってもらうため、より集客が見込まれるFIEの一階テナントを葉子に勧めんだよ……と。
「お客様に教えていただいてありがとうございました」
「何を言っているんですか。いいものは勧めなくっちゃ」
「スィーツのお店でもそうじゃないですか。本当に美味しければわざわざ足を運んでも食べたくなる。『どこか美味しいところはない?』って聞かれたらつい教えちゃう。それが、人間の心理ってやつです。羽並さんが作り出すアレンジって、受け取る側のことをよく考えてあるから、嬉しい気分になるんですよ。私だけの花って気がして」
「ありがとうございます……。凄く嬉しい」
彼女らの言葉は私の励みになっていた。母を亡くして落ち込んでいる場合じゃない、もっともっと人のためにアレンジを作り続けたいと思っていた。










カレンダーは、14の数字に丸が付いている。
そう。今日は、FIEが土地買収から完全撤退する日だった。最後まで、説明会に行くか迷っていたが、多美子さんより止められた。
『あなた、恩田副社長が攻撃されるところ見たいの?彼は、きっと、あなたを守るために自分が盾になるつもりよ。行ったら同情して何を言い出すか分からないわ。止めておきなさい』
彼女の言うとおり、余計な顔出しをせず、この店でその日が過ぎ去るのを待つ。それが、最善策のような気がした。
 





私は重い腰を上げ、母の遺品を整理することに決めた。
いつまでも、後ろばかりを振り返るのは止めようと思ったのだ。店も少しずつではあるが客入りが伸びてきているし、店の外にカフェを作る構想も具体的に進み始めている。今日の休みで片付けるしか、時間は無かった。
私はまず、祖母の代から使っている母お気に入りの本棚の整理を始めることにした。退院した後、病室にあった雑誌やチラシなどそのまま放り込んでいたから、ぐちゃぐちゃだったのだ。
母が病室で読んでいたフローラルという雑誌。
その先月号を取り上げると、本の間から大学ノートが落ちてきた。表紙にはNO50と書かれてあって……。


それは、母の日記だった。








第45話へつづく














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目次

私の彼は副社長

登場人物

~出会い編~
1/ 2/ 3/ 4/ 5/ 6/ 7/ 8/ 9/
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17/ 18/ 19/ 20/ 21/ 22/ 23/
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38/ 39/ 40/ 41/ 42/ 43/ 44/
45/ 46/ 47/ 48/ 49/

~真純くんの事情~
1/ 2/ 3/ 4/ 5/ 6/ 7/ 8/ 9/ 10/
11/ 12/ 13/ 14/

~恋人編~
本家サイトにて公開中(R-15)





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