four seasons ~恋人たちの午後~

気の向くままに文字を綴ります。。。

05月≪ 06月/123456789101112131415161718192021222324252627282930≫07月

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

私の彼は副社長 2-4


― まったく、社長はどうしてこの面子を揃えたんだ。



目の前にいる買収スタッフを見つめながら、僕は呆れ返っていた。
サングラスに額の剃り込み、どこから見ても強面なふたり組みでおまけに白いスーツときている。
そのふたりにサングラスを外させた僕は、さらに驚いた。
ふたりは、FIE東日本エリア、西日本エリア各支部の代表だったのだ。数年前までは買収を専門に行っていた。
もちろん、僕も彼らを知っている。常識ある頭の切れるスタッフだと。
「随分会わない間に服のセンスが変わったようですね。あなたたちのファッションにとやかく言いたくは無いけれど、それはどう見ても相手を脅している格好にしか見えない」
あまりにもその格好が気になってしまい、話を中断しそんなことまで言ってしまった。
だが、彼らの答えはこうだった。「すみません、副社長……。ですが、これは社長の命令で」

「えっ!社長が」

まったく、何考えているんだと呆れてしまった。きっと、手っ取り早く威圧して買収を成功させようと言う魂胆だったのだろう。突拍子もないのか単純発想なのか、時々我が父ながらその考えが分からなくなる時がある。
「…じゃ、明日からは普通のスーツでお願いします」
「はい」
なんだか穴に入りたいくらい恥ずかしい。僕は、咳払いをすると大人しく彼らの申し送りに耳を傾けることにした。





「……と言うことは、そのはなみ花屋の店主は買収に関して、全く聞く耳を持たないということですね」
資料を見ながら驚いたのだが、この頑なに拒否を続けている買収相手、羽並葉子。
年は若く、病気の母の面倒を見ながら店の経営をしている。
自分らの首を絞めるような店でも思い入れが強いようで、売らないの一点張り、いつも門前払いなのだという。
「流れは分かりました。じゃ、後は僕が引き継ぎます。あなたたちは、社長の指示に従ってください」
「はい」
ふたりの背中を見送った僕は、課長へ声かける。いつも僕の気持ちを理解してくれる片腕みたいな年上男性山口だった。
「車をつけてもらえるか。商店街に行こう」
僕は、頑固者の羽並葉子を見るため立ち上がった。
気持ちがワクワクする。果たして何日で落とせるか……ちょっとしたゲームだった。










「これはこれは、副社長さま。こんな小汚い定食屋にようこそ」
はなみ花屋の真向かいにある小さな定食屋は、こんな昼時にもかかわらずひとりの客も来ていなかった。名刺を渡すと自分を殿様扱いする店主。時代劇の悪代官のような腹黒そうな顔に、清掃が行き届かない店内。普段ならば椅子に着く前に即バックとなるのだが、目的を果たすためには、我慢するしかなかった。
「山口、ついでだからお昼にしよう。僕は、そうだな焼き魚定食」
「それでは、私はハンバーグ定食で」
さすがに焼き魚で不味いものは出てこないだろうと思った。魚を焼くぐらい誰でも出来るだろうと。
だが、そんな考えが甘かったことを店主が焼きにかかってから知らされることになったのだ。近所に魚屋があるのになぜかその魚は新鮮ではないようで目に沁みる煙は出てくるわ、焼け焦げた臭いはしてくるわで、食べる前から食欲が失せきってしまうようだった。
「店主?」
「はい、副社長さま」
僕は、カウンター向こうで魚を焼く店主に声をかける。
「その魚は、魚住鮮魚店の魚なのか?」
その店主は、自信ありげに答える。
「この魚は、駅向こうのやつですよ。魚住のなんか高くて買えません」
ようやく理解した、お買い得品の魚を平気で客に出す店主。誇りを捨ててしまった料理人に、深いため息をついた。
「山口。ちょっとタバコを買ってくる」
「ごゆっくり」
イラつく僕をなだめる様に、山口は穏やかに返事をしてくれた。








煙の立ち込める店を出て、僕は外の空気を思い切り吸い込んでいた。
あまり効果は無いと思うが、気持ちスーツを叩いて、焼き魚の臭いを取る。
「まったく、なんて商店街だ。店主の自覚がなさ過ぎる」
午前のうちに買収済みの店を全部回り、担当者が交代したことを説明して回った。どこの店もやる気が無い店ばかりで、文房具屋には埃を被った商品が置いているし、駄菓子屋は品切れの菓子ばかりで楽しむ喜びも湧かない。この商店街に一軒しかない服飾店は、お年寄りでも着ないであろうセンスの洋服ばかりが目立った。
それに追い討ちをかけるように、タバコの自販機の前に立つと愕然とする。どれもこれも売り切れサインが付いているのだ。
「腹が立つのを通り越して、呆れるよ」
実際タバコなど吸わないからあるもので構わないのだが、これで商店街として成り立っていることが不思議でたまらなかった。同じ客商売をしてる身として恥ずかしささえ感じていた。
僕は、一番口に軽いタバコを購入することに決めた。
だが、迷っているようにゆっくりと振舞う。全ては、はなみ花屋を偵察するためだった。




「葉子ちゃん、お漬物持ってきたわよ」
「ありがとうございます!シズさんも来てるんですよ。どうぞ、お茶でも飲んでいってください」



ここの商店街の華と言ってもいいかもしれない。
黒い髪をひとつに結い上げた若い女性は、明るい笑顔を見せながら、見るからにお喋りに来たと思われるお年寄りたちを招いていた。土間から一歩上がった畳の部屋には3人の客が座っており、花なんか無視して話に花を咲かせている。
店主と言えば、その客にお茶をいれたあと、店に出て花の整理をしていた。
「あっ、お代わりは自分で入れてくださいね。私忙しいんですから」
「何言ってるの葉子ちゃん、今日は客来たの?」
「もちろん、ゼロですよ。来るわけ無いじゃないですか!」
ざっくりとバケツに挿されてある花の束を抱えながら、彼女は眩しいくらいの笑顔を見せ声を上げて笑った。
僕は、じっと彼女の姿を見つめていた。
どうしてだろう。倒産寸前の店を持ちながらも、暗さなど微塵にも出さず働いている店主。商売っ気の無さには呆れながらも、商店街の他の人とは違うものをその女性に感じていた。
店主は花を取り上げ、手際よく葉を間引きしはじめた。手を加えられた花は、生き返ったように活き活きと自身を主張し始める。慈しむように見つめた女性は、花をまるで恋人の肌でも撫でるかのように優しく扱っていく。


「彼女は、本当に花が好きなんだろうな」


ふと彼女と顔が合いそうになる。僕はタバコを取り上げると定食屋へと戻ったのだった。








第5話







葉子との交わりは、もう少し後に。。。






ランキング参加しました♪
(かなりの確立で更新の後押しとなりそうです。。。笑)
にほんブログ村 小説ブログ 恋愛小説へ

スポンサーサイト

コメント

こんにちは、まるこさん。
真純君サイドから書かれているのって
いいですね。
真純君がどのような思いで葉子のことを
愛するようになるのかが手に取るように分かるんですものね。
それぞれのサイドに分けて書くのも
大変ではないですか?
真似っこしたいけれど、私の技量
じゃなかなか出来そうにありません(汗)

そちらは台風や大雨で大変な夏を
迎えてらっしゃいますね。大丈夫ですか?

zaziさん♪

こんにちは☆

真純サイド。
本編を見返しての辻褄あわせの作業が大変ではありますが、男性サイドは作者が宝塚気分になれるので結構面白いですよ(笑)私自身も、執筆モードへ戻ってきているみたいなので、お盆を過ぎたら精力的に頑張んなきゃなと思っています。

今年九州は台風の当たり年でしょうか(えっ?もしかして私?)。旅行中、二回台風に追われて、一回は突然の大雨で車が水につかりそうになったり、なんだかついていない夏休みになっちゃってます(苦笑)

コメントの投稿


管理者にだけOK

HOME

プロフィール

まるこ

Author:まるこ
オリジナル恋愛小説を運営する
心の景色を文字にするのが大好きな
管理人。
『春夏秋冬』(R-15)

注)広告目的のコメントについては
予告なく削除することがあります。

目次

私の彼は副社長

登場人物

~出会い編~
1/ 2/ 3/ 4/ 5/ 6/ 7/ 8/ 9/
10/ 11/ 12/ 13/ 14/ 15/ 16/
17/ 18/ 19/ 20/ 21/ 22/ 23/
24/ 25/ 26/ 27/ 28/ 29/ 30/
31/ 32/ 33/ 34/ 35/ 36/ 37/
38/ 39/ 40/ 41/ 42/ 43/ 44/
45/ 46/ 47/ 48/ 49/

~真純くんの事情~
1/ 2/ 3/ 4/ 5/ 6/ 7/ 8/ 9/ 10/
11/ 12/ 13/ 14/

~恋人編~
本家サイトにて公開中(R-15)





拍手御礼!

拍手をいただきありがとうございます。皆さんに楽しんでいただけるようこれからも頑張ります!

コメントお礼

ブログランキング
最近の記事
最近のコメント
カテゴリー
お薦めブログ
お気に入りブログ小説

大人向きのものも含まれています☆


 Lovers


上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。