four seasons ~恋人たちの午後~

気の向くままに文字を綴ります。。。

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私の彼は副社長 43


「白紙にするの?」
真純は仕事の表情のまま、私が渡したダレスバッグを受け取る。仕方がないとはいえ、その決断に複雑なものを感じていた。
彼との繋がりのひとつでもあったこの買収。それが、消えること。
「ああ。『こんな形で買収が成立したとしても、わだかまりが残るだけ』そう役員会議で言い放った」
「そう……」
「皆、僕の判断が意外で驚いたみたいだ。人間ぽいなんて皮肉も言われたし」
苦笑しながら真純は呟き、そして、私の名前を呼んだ。
それはとても優しく、いとおしげで、だけど今にも消え入りそうなくらい細い声に聞こえた。



「葉子さん…」



嫌な予感を感じていた。
というよりも、彼を罵った後から心に湧いた別れの予感が、現実味を帯びてきたのだ。今まで触れようとしなかったこれからのふたりの関係について、真純の口から語られるのだと知った。
ふと、寿命がきてしまった蛍光灯の瞬きに気付く。それは、彼の寂しげな表情を浮き彫りにしていた。

「結局……君を幸せに出来なかったね。ごめん」

胸が、キュンとした。

「全ては…………僕のせいだ」

言葉の端に、彼の気持ちが見え隠れする。
こんなにも罵った私のことを、まだ大事に思ってくれてるのだと思うと切なすぎて胸が熱くなった。



そういえば以前、社長である真純の父がこんなことを言っていたと聞かされたことがあった。
『深入りした情のせいで、買収は成立しないんだ』と。
まるで占い師のように的中したこの言葉、もしかすると社長は、恋路までもが壊れると予知していたのではないだろうか。
買収とプライベートがごちゃ混ぜになったために起こってしまった出来事。愛情を押しのけるように生まれてしまった彼に対する不信感は、あまりにも大きい。そんな気持ちを持ったまま恋人関係を続けるなんて出来るはずがなかった。



「僕らの関係も白紙にしよう」



『別れよう』の方がまだ思い出に浸れてよかったかもしれない。だが、真純はあえて白紙という言葉を選んだような気がした。
彼との出会いも、喧嘩したことも、あのキスも、全ては無かったことに……
恩田真純との思い出全てを断ち切れと言われたような気がした。







いつの間に落ちたのだろうか。



土間に落ちていた赤い薔薇の花びらを拾い上げた真純は、私の手を掴み、そっと掌に乗せた。
「今更、僕がこんなこと言っても信じてくれないかもしれないが、はなみ花屋は経営の仕方を変えれば、借金の返済が出来るくらいには建て直せると思うんだ。君には生まれ持ったセンスがあるからそれを売りにしてもいい、君の花に癒されにきた客のために小さなカフェを開くという手もある。噂で客が増えれば、土地を売らなくても十分に生活していけるようになるよ。お母さんを亡くして辛いと思うけど、7日過ぎたら無理してでも店だけは開けてくれ。きっと仕事が、癒してくれる」
 

「僕が力を貸さなくても、君なら、やれるさ」


真純はそう付け加えると、くるりと踵を返した。
握られていた手にスッと寒さを感じると、彼の体温を逃さないように薔薇の花びらをぎゅっと握り締める。


「…さようなら」


別れの言葉をかけられ、心を握りつぶされたような痛みが走った。きっと同じ気持ちを彼も持っているのかもしれない。真純もまた背中を見せたままで、振り返ることはなかった。
そして真純は、店のシャッターをくぐり、すっかり寝静まった商店街通りへと消えて行ったのだった。








結局、私は彼に対し何一つ言葉をかけることが出来なかった。
店に静けさが戻ると、張っていた気持ちがふっと抜け、へなへなと土間に座り込んでしまう。
深々と冷えた土間が、私の足から体温を奪っていった。

「一体私はどうすればよかったの。おかあさん、あの時本当は何を言いたかったの」
 
願いが叶うなら、母ともう一度話したかった。













プーー。






母の旅立ちは、ぼたん雪が降る中行われた。
霊柩車が切なく響かせた車のクラクション。その音が消えてゆく頃、母の遺影を持つ私の目に真純の姿が映った。

大勢の参列者の中に交じり、肩を震わせ男泣きする真純を、隣に立つ顔つきのよく似た社長が支えていたのだ。
母のためにここまで泣いてくれるなんて思わなかった。
母を想う彼の気持ちが、今頃になって伝わってきたのだった。









第44話へつづく










凄くお待たせしました~~♪



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目次

私の彼は副社長

登場人物

~出会い編~
1/ 2/ 3/ 4/ 5/ 6/ 7/ 8/ 9/
10/ 11/ 12/ 13/ 14/ 15/ 16/
17/ 18/ 19/ 20/ 21/ 22/ 23/
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38/ 39/ 40/ 41/ 42/ 43/ 44/
45/ 46/ 47/ 48/ 49/

~真純くんの事情~
1/ 2/ 3/ 4/ 5/ 6/ 7/ 8/ 9/ 10/
11/ 12/ 13/ 14/

~恋人編~
本家サイトにて公開中(R-15)





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