four seasons ~恋人たちの午後~

気の向くままに文字を綴ります。。。

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私の彼は副社長 40


母の昏睡状態は、ずっと続いていた。
呼びかけにも、痛み刺激にも、全く反応がない状態。私は、母の傍らに付き添い名前を呼び続ける。
何かのテレビで聞いたことがある。三途の川を歩いていたら呼び止められ、奇跡的に助かったのだと。そんな川を見ているかもしれない母へ、必死に訴えた。
「羽並さん、少し休まなきゃ」
朦朧としていた私は、看護師より肩を叩かれる。もう3日こんな状態が続いていて、精神的にも身体的にも限界のはず。だが、闘い続けている母のため、自分だけ楽になる事は出来なかった。





***




『葉子、そろそろ孫の顔を見せてよ』
母の声が聞こえてくる。
ここは、はなみ花屋。
私は、今の季節には無いはずのチューリップの花束を作りながら振り向いていた。なんだかとても幸せに満ち足りた気持ち。そして、私の口からこんな言葉が出てきた。
「焦んなくても、もうすぐ見れるわよ」
『もしかして』
「そうよ、お母さん。真純さんとの赤ちゃんができたの」
その瞬間、これは願望が見せる夢だということに気付いていた。現実を逃避するための夢だと。
『葉子、よくやったわ!葉子……葉子』
母の声が頭の中に響く。そして、幕が降りるように、視界は真っ暗になっていった。





***






「葉…子……葉子」



耳に遠く母の声が聞こえていた。
どうやら、まだ夢を見ているみたい。でも、それにしては何度も声かけられていて、私は、重たい瞼を開けた。
心電図のモニターの音がはっきりと聞こえてきて、ここが現実だと教えてくれる。
まず目に入ったのは、ベッドに置いた私の右手。
その手の上には母の手が重ねられてあり……。その現実に、ぼんやりとしていた意識がはっきりとした。


「お母さん!!」


頭を上げるとベッドに休む母の顔を見た。母はうっすらと目を開けこっちを見ている。
「ああ、お母さん気がついたのね!!よかったぁ」
私は安堵した。この声が母の耳に届いたのだ。
「よかった。本当に良かった。お医者さん呼ぶね」
ナースコールを押す手を、母はキュッと握る。




母は何かを言いたそうだった。
しきりに口を動かしていて、どうしたのと言いながら母の口元へ耳を寄せた。
「葉……子…」
途切れがちな母の声。
「分かるわよ。何?お母さん」
私は、母の手をギュッと握り返し何度も頷いた。
「……あの土地は……FIEに譲りなさい……。守る必要は……もうない」





母の白い手が、私の手からするりと落ちた。





「おかあさん?ちょっと、ねぇ、どうしたのよ」
モニターのアラームが、けたたましく鳴り響いた。
ドアから入ってきた医師と看護師がその様子に驚き、母から私を引き離す。
「ねぇ、おかあさん。何か言ってよ……」
私は、わめくことさえも出来ないまま、腰が抜けたように床に座り込んでしまった。母の痩せた手の感触だけが、しっかりと私の掌に残っていた。












母の魂は一体どこに行ったのだろう……。





看護師より母の身を綺麗にしてもらっている間、私は病室の整理をしていた。
何の感情もわきあがらず、まるでロボットのように淡々と作業をこなしてゆく。すると、カーテンに隠れて気付かなかったが、キャビネットの上に花束が飾ってあるのに気付いた。それは、どこかで見たことがあった。
「こ、これは……。私が作って真純さんに届けた花束。どうしてここに?」
紐組みを使う花屋なんてそうないし、アレンジから包装紙から自分が作ったものとそっくりだったのだ。
私は、花束を手に取っていた。
まだ活き活きとしているダリアに、どうしても真純の姿を重ねてしまって頭を振る。
すると、花の間からカードがひらひらと落ちてきた。


『Happy Birthday!』


真純のサインが入ったそのカード、間違いなく彼が残したものだった。
誕生日なんて知らないはずの彼が……いや、それとも知っていたとでもいうのか。


― そうだね。そうそう、君のお母さんをイメージしてもらったらいいかもしれない。


真純が花束を贈りたかった年配女性というのは、実は母だった?
一体どういうことだと頭が混乱する。頭を手で叩きつけながら自身を落ち着かせようとしたが。


― えっ?母親。ああ……駄目ならばまた対策を練らないといけないでしょうが、心配は要らないでしょう。


携帯に向かって淡々と話す真純の言葉を思い出し、そして、追い討ちをかけるように、母の最後の言葉が浮かんだのだった。


― ……あの土地は……FIEに譲りなさい……守る必要は……もうない。





買収を母に教えたのは、真純だった。





足ががくがくして止まらなくなり、床に座り込む、
「彼に言われ、母は死ぬまで土地のことを気にしていたの?」
頭がおかしくなりそうで、自分の手でかきむしる。
まだ生き生きとした毛髪が抜け落ち掌にまとわりついた。
「真純さん……どうして」
悲しさと悔しさと失望とが入り混じった涙が、洪水のように溢れ出す。
胃の中を針でかき回されたような痛みが走り、そこから湧き上がるような吐き気に襲われたのだった。











第41話へつづく














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コメント

もう、どうなってしまうのかと……

まるこさん、お邪魔しております。

真純さんと葉子さん、二人の距離はかなり近づいた筈なのに、また、大きく開いてしまったような気がします。
それも、かなり決定的に……。

次回、二人が顔を合わせた時にどんな会話がなされるのか、また、二人はこれからどうなってしまうのか、想像しただけでドキドキしてきます……!

おおお~、トイ子さん☆

いらっしゃいませ~~!
先日はメールをいただいてありがとうございました~~♪遅ればせながらですが、お返事しています。時間のある時にでも、いつもの場所にお立ち寄りくださいませ。

さて、早速読んで下さったのですね~~~うれし~~!!そうなんですよ。致命的なことをやってくれました。

まぁ、どう考えても次回は平穏じゃすまないでしょうね~(まだ、白紙ですが)でも、苦難の真純くんが描けるので執筆者としては、ちょっとうきうきかもです。。。(サド)
次回も楽しみにしていてくださいね~☆

うわー まるこさん、次はもうすごいことになること間違いなしですね!!

読むのが、なんだか怖いです~。
でも、楽しみにしてますね。

きゃ~♪アミーナさん!

いらっしゃいませぇ~☆

そうなんです~、アミーナさんのおっしゃるとおり、凄いことになること間違いなしです(笑)『おいおい、なにやってんだよ真純』状態ですね。この一件でふたりの仲は決裂するのかそれとも……。まだ白紙ですが(汗)次回も楽しみにしていてくださいね~☆

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プロフィール

まるこ

Author:まるこ
オリジナル恋愛小説を運営する
心の景色を文字にするのが大好きな
管理人。
『春夏秋冬』(R-15)

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目次

私の彼は副社長

登場人物

~出会い編~
1/ 2/ 3/ 4/ 5/ 6/ 7/ 8/ 9/
10/ 11/ 12/ 13/ 14/ 15/ 16/
17/ 18/ 19/ 20/ 21/ 22/ 23/
24/ 25/ 26/ 27/ 28/ 29/ 30/
31/ 32/ 33/ 34/ 35/ 36/ 37/
38/ 39/ 40/ 41/ 42/ 43/ 44/
45/ 46/ 47/ 48/ 49/

~真純くんの事情~
1/ 2/ 3/ 4/ 5/ 6/ 7/ 8/ 9/ 10/
11/ 12/ 13/ 14/

~恋人編~
本家サイトにて公開中(R-15)





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拍手をいただきありがとうございます。皆さんに楽しんでいただけるようこれからも頑張ります!

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