four seasons ~恋人たちの午後~

気の向くままに文字を綴ります。。。

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私の彼は副社長 39


「もしかして、私ってストーカー?」
私は、花束を届けた後FIEの隣にある喫茶店にいた。会議がすぐ終わるとも考えられないし、会えるはずはないのだが、なんだか彼に会えるような気がして、ここから離れることが出来なかったのだ。
次の電車の時間まで……そう思いながら、既に6度の電車を見送っていることになる。
飲み干してしまった珈琲のお代わりを店員へと告げた私は、これで帰途につくことを心に誓った。



午後8時。
隣の大きな窓からは、FEIの通用口が見えている。職員の交代時間は過ぎているようで入り口は閑散としており、明るい照明の下、警備員がひとり暇そうに立っている。その警備員の人間ウォッチングを楽しみながら、温かな珈琲を喉に流し込んでいた。
すると、通用口前にいかにも重役が乗り込みそうな黒塗りの車が止められる。ある確信が過ぎり、心は逸った。

「あ……」

車の陰に隠れて見えにくくなった入り口向こうの情景を見るため、目を凝らす。そこには、真純の姿が見え隠れしていて……次第にその姿は大きくなり、通用口に差し掛かる。私は席を立つとお金を払い、無我夢中で走り出していた。
真純は、片腕に花束を抱え、もう片手には携帯電話を持った姿で歩道を歩いていた。彼の背中まであと数歩の距離。私は彼の背中を叩こうと、手を伸ばした。




真純は、土地の話しをしていた。
「…羽並花屋のほうも手ごたえありますから、買収は終わったも同然です。遅くても、来年の桜が芽吹く頃には着工出来るようにします。……えっ?母親。ああ……駄目ならばまた対策を練らないといけないでしょうが、心配は要らないでしょう……」
出した手を引っ込めた私は、淡々と話している真純の背中をジッと見つめていた。彼は気付くことなく開けられたドアから後部座席へ乗り込む。携帯を片手に資料を出し見ている彼の横顔は、以前FIEを名乗った時と同じ表情だった。




車は、滑るように動き出す。
私は結局、彼に声掛けることが出来ずに立ち尽くしたままだった。
仕事とプライベートを割り切っている真純。当然のことながらも、事務的に進められる会話に寒々としたものを感じていたのだった。










私は、布団に寝転がり真純から貰ったメモを見ていた。あのスイートルームとは全く違うせんべい布団は凄く冷たくて、心まで寂しくなる。

「やっぱり、電話してみようかな…」

ようやく決心が付き、ムクリと起き上がった私は、電話の受話器をとる。きちんと正座をして、心のドキドキを抑えた。
きっと、プライベートの彼の温かな声を聞いたら、心の寂しさやなんとなくの不安も消えてしまうだろう。
「090……」
ひとつひとつの番号を押してゆく。緊張のあまり最後の7が押せなくて、手が震えた。



プルルル……



だが、コールを二回聞くことなく、事務的な女性の声で案内が始まったのだ。
「……只今電源を切っているか、電波の届かない場所に……」
これがどういう状態なのか、携帯を持たない私でも知っている。詩織がよく使う手だった。手が離せないときや出たくない時に、コールの途中で電源を切る。すると、こんなメッセージが流れるのだ。
『今どき、電波の届かないところなんてエレベーターの中か、山の上ぐらいよ。こんな案内流れたら、相手は嫌がってるって思ったら良いわ』
詩織の話が全てなら、今真純は電話に出たくないということになる。
午後11時。未だ仕事が忙しいのか、プライベートで出れない状況にあるのか。それしか考え付かなかった。

― 折り返し連絡するよ。

あとは、着信履歴に彼が気付いてくれるのを待つしかなかった。




「待つ身って、辛いわね」
結局、日付が変わっても真純からの連絡はなかったのだった。










「わ~ん、遅れちゃった」
母の誕生会で食べる料理の仕込みに夢中になりすぎて、母の病院に着いたのはお昼過ぎになってだった。朝の電話では元気で楽しみにしていると言っていた母。きっと、遅いと怒られるに違いない。息を切らしながらナースセンターにたどり着いた私は、慌しく働いている看護師に声をかけた。
「羽並ですけど、外泊のお迎えに……」
その声に敏感に反応した看護師は、青ざめた顔をして私に声を上げた。

「羽並さん、お母さんが急変したの!」
「えっ?」

自分に起こったことだと理解するのにやたらと時間がかかった。時間が止まったかのように身体が動けなくなる。まるで冷水を浴びせたかのような冷や汗が、背中と掌に浮き出ていた。
「早く、行って」
背中を押され、ようやく足が動き出す。
私は、母のいる病室へと走り出していた。








第40話へつづく














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目次

私の彼は副社長

登場人物

~出会い編~
1/ 2/ 3/ 4/ 5/ 6/ 7/ 8/ 9/
10/ 11/ 12/ 13/ 14/ 15/ 16/
17/ 18/ 19/ 20/ 21/ 22/ 23/
24/ 25/ 26/ 27/ 28/ 29/ 30/
31/ 32/ 33/ 34/ 35/ 36/ 37/
38/ 39/ 40/ 41/ 42/ 43/ 44/
45/ 46/ 47/ 48/ 49/

~真純くんの事情~
1/ 2/ 3/ 4/ 5/ 6/ 7/ 8/ 9/ 10/
11/ 12/ 13/ 14/

~恋人編~
本家サイトにて公開中(R-15)





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