four seasons ~恋人たちの午後~

気の向くままに文字を綴ります。。。

07月≪ 08月/12345678910111213141516171819202122232425262728293031≫09月

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

私の彼は副社長 36


雪は、まだ降り続いていた。



「今日は、泊まるつもりでしょう?もちろん」
窓の外を見る私の背中から覆うように、真純は抱きしめてくれた。
午前零時とともにスプレーされたちょっときつめのラッシュが、私たちを包み込む。あと数十時間後には日本とロスとでまた離れ離れになるふたり。だけど、彼と離れてしまっても、この移り香が彼との気持ちを繋げてくれるような気がした。
私は、とても幸せだった。『もちろんよ』と言わんばかりにゆっくりと頷くと、彼の温かい頬が私の頬に優しく当てられたのだった。



トゥルルル……。



私たちの甘い雰囲気を壊すように、携帯電話のベルが聞こえていた。リビングのソファーにかけられた真純のジャケットからだ。彼は私を抱きしめたまま、じっとその音に聞き入っているようす。そのベルは、7回高々と鳴り響いた後、プツンと切れた。


「ごめん……、緊急の呼び出しだ」


真純は、ゆっくりと私の背中から離れると頬に軽くキスをする。そして、ソファーに歩み寄りジャケットから携帯電話を取り、私に背を向け話し始めた。
「恩田ですが……、はい、はい…。そうですか、業者には?…えっ、はぁ?それじゃ間に合わないでしょう。明日の10時から、競技大会は始まるんですよ!ウォーミングアップも出来ないじゃないですか。ああ、下に言っても埒あかないですね。僕が上に電話しますから、支店長は待機していてください」
電話の内容を聞くつもりじゃなかったが、彼の大きな声に内容は筒抜けだった。
ちょっと怒ったような口調。トラブルのようで嫌な予感が頭を過ぎってゆく。それを浮き彫りにするかのように、真純は電話を切ると深いため息をついた。


「FIEに戻ることになった」


本日午前10時、国内の各FIE支店から選抜された水泳会員の記録会。年に一度の大々的なイベントなのだが、プールの水を温め循環する装置の故障で大変な騒ぎになっているとのこと。業者に修理を依頼するが、専門の者が出張に出ていると言うことで、夜が明けないと修理ができないと言っているようだった。
すぐに、真純は業者の社長に連絡を取り、冷静ながらも怖いくらいの口調で話していた。
「そちらの装置は最新のコンピューターで性能もよく、私共も安心して使わせていただいてました。でも、いざという時のアフターが悪ければ、これからの取引は難しくなるでしょう。貴社の従業員の話からすると、この真冬に水入りのプールで泳げと言っているようにしか聞こえない。循環するのにどれくらいの時間を要するか、社長なら分かっていただけると思いますが……いかがです?社長」
真純は、耳に携帯電話を当て肩で挟みながらワインレッドのネクタイを首にかける。鏡を覗き込みながら器用に結んでいった。


「そうですね。そうしていただくと助かります。はい、では後ほど」


パチンと電話が閉じられると、寝室にあるウォークインクローゼットから黒のロングコートを出し羽織る。葉子の元に近づくと再びギュッと抱きしめ、耳元で囁いた。
「帰りは早朝だろう。ほんとにごめん。寂しいけど、ゆっくり休んで、帰って来なかったらそのまま帰ってくれ」
とても、寂しかった。せっかく彼と気持ちが通じたのにまた離れ離れ。だが、仕方がない。彼はこれから寝ずに明日の大会のためのプールの修理に立ち会うのだ。私は心に何度も何度も言い聞かせる。そして、にっこりと笑った。
「頑張って、真純さん」
「ああ、君のラッシュがあるから頑張れる」
真純も微笑を返しながら、私の肩を掴み身体から離したのだった。







私は、大きなガラス窓を覗き込んでいた。
真綿の雪が降り続く中に、玄関から出てきた真純の姿が小さく見える。
視線が届いたのか、2、3歩歩いた彼は、顔を上げこちらに視線を向けた。
大きく手を振ったがさすがに見えないようす。踵を返されると、私の心は、絞り上げられるように痛み、きゅうんと切なくなった。
そして、最終電車が待つ地下鉄の駅に、黒いロングコート姿は吸い込まれていったのだった。









第37話へつづく














ランキング参加しました♪
(かなりの確立で更新の後押しとなりそうです。。。笑)
にほんブログ村 小説ブログ 恋愛小説へ
スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿


管理者にだけOK

HOME

プロフィール

まるこ

Author:まるこ
オリジナル恋愛小説を運営する
心の景色を文字にするのが大好きな
管理人。
『春夏秋冬』(R-15)

注)広告目的のコメントについては
予告なく削除することがあります。

目次

私の彼は副社長

登場人物

~出会い編~
1/ 2/ 3/ 4/ 5/ 6/ 7/ 8/ 9/
10/ 11/ 12/ 13/ 14/ 15/ 16/
17/ 18/ 19/ 20/ 21/ 22/ 23/
24/ 25/ 26/ 27/ 28/ 29/ 30/
31/ 32/ 33/ 34/ 35/ 36/ 37/
38/ 39/ 40/ 41/ 42/ 43/ 44/
45/ 46/ 47/ 48/ 49/

~真純くんの事情~
1/ 2/ 3/ 4/ 5/ 6/ 7/ 8/ 9/ 10/
11/ 12/ 13/ 14/

~恋人編~
本家サイトにて公開中(R-15)





拍手御礼!

拍手をいただきありがとうございます。皆さんに楽しんでいただけるようこれからも頑張ります!

コメントお礼

ブログランキング
最近の記事
最近のコメント
カテゴリー
お薦めブログ
お気に入りブログ小説

大人向きのものも含まれています☆


 Lovers


上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。