four seasons ~恋人たちの午後~

気の向くままに文字を綴ります。。。

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私の彼は副社長 31


「調子がいいから、退院させて下さいって頼んだのだけど……。ここの医者は、心配性なんだから」
母は真純と話しをした後から、退院を目標に頑張っている。
昔していた泳ぎを始めたいと言い、元気になったら真純のスポーツクラブに通うんだとの進歩。
彼には、いろんなことで助けてもらってる気がする。本当に感謝だ。




「ねぇ、お母さん……」
「あっ、葉子。あの写真持って来てくれた?」
「あ、うん」
私は買収の話を持ち出せないまま、母から頼まれたアルバムを手渡した。それは、白黒の色褪せた写真。はなみ花屋の創業時代の写真が入ったアルバムだった。
私も、久し振りに見るような気がする。
もう、何十年も昔のはなみ花屋。店の概観は今と全然変わらないが、隣人や常連さんに囲まれて、祖母が嬉しそうに笑っていた。
「これはね。塩崎さんが写してくれたんだって。この当時はね、カメラを持っている人なんて、本当のお金持ちだったのよ。ほら、葉子見える。奥の自宅が今と違うでしょう。今の自宅は、私がここに来て建て直したの。もちろんお金がなかったから、掘っ立て小屋みたいなのしか造れなかったんだけどね」




母は、懐かしさを味わうように写真を見つめている。
「でもね、まだおばあちゃんが亡くなる前だったかしら、買収の話が出たのよ」
「土地の?」
そんな事、私は初耳だった。
「それで?」
「その時は、商店街に陰りが出てきた頃でね。頭のよい経営者数人は、その話に乗ったわ」
「うちは?」
「おばあちゃんが、買収に反対したのよ。何もないところから始めたお店だもんね。その大切さが分からなくて、あの頃、随分喧嘩したわ」


「そうだったんだ……」


私は、呟いていた。
おばあちゃんの思いを考えると、買収を受けるなどと言い出せなくなりそうだった。
「だけど、あの時売っておけば、今、お金でこんなに苦労することはなかったのよ」
「ねぇ、おかあさん?」


今が、チャンスだと思った。


私は、母を呼ぶ。
だが、それは他の患者の来室で遮られる事となった。
「羽並さん、あら娘さん来てたのね」
「こんにちは」
一番いいところで割り込まれて、私は、苦笑しながら会釈する。彼女はベッドサイドの椅子にドンと座ると話し始めた。
「土地売るの?」
中年女性の彼女は、しっかり私たちの話を聞いていたみたいで。
「違うのよ。昔の話」
「そうよね。羽並さんところは、駅前で凄く立地がいいんでしょ。売るなんて駄目よ。今は景気が悪いかもしれないけど、いつ回復するか分からない。それに長年住み慣れた我が家を盗られるのは、私たち年寄りには辛い話よ……ねぇ、娘さん。あなただってそう思うでしょ」
「は、はあ……」




その女性は、ほとんどひとりで話している。
彼女の土地も昔買収されたようで、今度はその話を始めた。彼女の土地を買収した不動産の悪行振りを懇々と言い聞かせた後、土地を明け渡したことを未だに後悔していると話した。
「どこの会社も馬鹿みたいに安く買って、儲けることしか頭にない奴らよ。だから、売らずに持ってるのが一番なの。経験者が言うんだから間違いなしだわ」
母は、その話を興味深げに聞いていた。彼女の話が全て終わると笑いながらこう言ったのだった。
「うちは、娘が売らないみたいだから。大丈夫よ」
そのつもりだったんだけど、おかあさん……。でも、状況が違ってきたのよ。
私は心の中でそう叫んでいたが、もちろん伝わるはずはなかった。




結局、私はひと言も母と話せないまま、病院を出た。
あの患者との話が終わったかと思ったら、点滴や処置やらで看護婦やドクターが代わる代わる入ってきて、二人っきりになれなかったのだ。
次回のFIE説明会は、来年。
母とは正月外泊の際に、誰にも邪魔されない環境で話すしかなかった。





外気温は、更に下がっているようだった。
大手百貨店が立ち並ぶ、建物の隙間から覗く今にも泣き出しそうな空を見上げた私は、大きなため息をついたのだった。








第32話へつづく










もう少し書きたかったのですが、長くなりましたので
ひとまずここで切らせてもらいました。。。(滝汗)



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目次

私の彼は副社長

登場人物

~出会い編~
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38/ 39/ 40/ 41/ 42/ 43/ 44/
45/ 46/ 47/ 48/ 49/

~真純くんの事情~
1/ 2/ 3/ 4/ 5/ 6/ 7/ 8/ 9/ 10/
11/ 12/ 13/ 14/

~恋人編~
本家サイトにて公開中(R-15)





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