four seasons ~恋人たちの午後~

気の向くままに文字を綴ります。。。

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私の彼は副社長 30


― 元彼が使っていたフレグランスと一緒なの。



GUCCI  rush for men.



クローゼットにかかるベージュのカットソーを取り出した私は、その布地にそっと頬を寄せていた。詩織の言った真純のフレグランス。未だにその香りが残るこの服は、彼とのキスのときにきていたものだ。時間も経ち、ほとんど幻臭に近いのかもしれないけど、彼を感じたくて、どうしてもこの服を洗うことはできなかった。




あの後、はなみ花屋の土地買収は、FIEの課長と名乗る人が担当になった。
人柄が良く、疑問に感じるところも噛み砕いた言葉で説明してくれる年上の彼は、真純とは正反対な穏やかで恰幅のよい男性。そんな課長に慣れた頃、雑談の中でそれとなく真純のスケジュールに探りを入れてみたが、教えてはくれなかった。


『すみません。羽並さんとは副社長の話をするなと言われているんです』


その言葉で、彼は私とのプライベートな関係を断とうとしているんだと理解した。
商店街の噂は、あの説明会をきっかけにピタリと収まった。だから、彼との関係も復活するかと淡い期待をしていたのだ。そんな考えは甘すぎるのだと、身をもって知らされた気がした。


― 彼と会いたい。


諦めきれない想いに悩まされながら、無情に時間(とき)は過ぎていくだけだった。




私は、クローゼットを閉めると店に出た。
巷は、クリスマスイブ。
この寂しい商店街も、その甘い雰囲気を味わうため、通りのあちこちにクリスマスイルミネーションが施されていた。
私は、身を切られるような寒さの中小さなクリスマスツリーを店先に飾り、思うままに花を選び出した。
真純に花束を作り始めて以来、まるで泉が湧き出るように花のアレンジが浮かんで仕方がなかったのだが、彼が来ないとそのアレンジは、ただの幻想へと変わっていた。
創造の欲求を鎮めるため、そして、むしゃくしゃした気持ちを落ち着かせるために久し振りに花束を作ってみることにしたのだった。


― 本当に守らなければならないものを見失っている。


花に触れていると、真純が言ったこの言葉が脳裏に浮かぶ。彼は、その答えを知っていたのだろうが、結局その答えを教えてもらうことは出来なかった。この土地でなければ、花屋の看板でなければ、それ以外に何を守るのだと言うのか……。







「こんにちは。花屋さん」


夢中だった私は、突然現れた男性を真純かと思ってどきりとした。だが、それは彼ではなく、最近挨拶してくれるようになった中年のサラリーマンで。
「よかったら。その花買わせてくれませんか?」
「え?」
あと、紐組みをつけるだけの花束。真純のことを想い作ったこの花束を指している事に、すぐに気が付いた。
「その花束かっこいいですね。私たち男性でも自然に持てそうだなと思って、買えますか?」
「も、もちろんです。ちょっとお高いかもしれませんが……」




真純仕様だから、いい物を使っている。もちろん見た感じは、いかにも花束というのを避けた感じだ。
薔薇アバランチェ ダリア黒蝶 アンスリュームテラ スプレーカーネーションガナッシュ ゲイラックス コウリヤン などを使ったウェディングブーケ風の花束である。ちょっとサラリーマンには、手が出なさそうな値段。でも、いらないと言われたらそれでいいかと思った。
「7000円になりますが」
「あ、いいですよ。奮発します。今日は結婚記念日なもので、早く仕事を切り上げて食事に行くんです。本当にいい花束だ」
「凄い、イブに結婚記念日なんですね!素敵……おめでとうございます!この花のアレンジは、ウエディングブーケをイメージして創ったんです。カクテルドレス風で。記念日のお手伝いが出来てとても嬉しいです」




「ありがとうございました!」
本当に、男性は花束を買って帰っていった。
いつも、背中を丸め自信なさ気に歩くあの中年サラリーマンが、今日は胸を張り、花束のかっこよさに負けないくらい自信に溢れている。なんだかその姿を見た私は、嬉しくてたまらなかった。自分の作品を認めてくれたこと、技術的にいいものだったら高くても買ってくれるということをあらためて知った。
もしかしたら、彼はこのことを言っていたのかもしれない。本当に守らなければいけないものは土地でも看板でもなく、私が代々受け継いできたこの技術だと。だから、彼はこの店と共に潰れゆく私を心配し続けていたのだ。


『土地買収って、結局はのっとり屋じゃないの。そんなこと平気で出来る人なら噂を流すなんて朝飯前……でしょ?』


私は、説明会で言ってしまった言葉に後悔していた。
私の技術、私自身を認めてくれている彼に、あんな状況だったとしても人として最低のことを言ってしまったのだ。
出来るのなら、もう一度会って謝りたかった。そして、ひと言彼に言いたかった。


『うちの土地を地域の役に立てて……。そして、はなみ花屋をFIEの窓口に置かせて欲しい……』と。




私は、土地買収を母に伝えることを決心した。








第31話へつづく







もう巷は春なのに、まだクリスマスイブだなんて。。。
恋人編では、季節が追いつく予定です。



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目次

私の彼は副社長

登場人物

~出会い編~
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~真純くんの事情~
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11/ 12/ 13/ 14/

~恋人編~
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