four seasons ~恋人たちの午後~

気の向くままに文字を綴ります。。。

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私の彼は副社長29


陽が落ちてからだった。
昼間と同じスーツ姿にコートを羽織った真純が、私の元を訪れた。
会議場で見たFIEのスタッフとともに。
「どうぞ、お茶入れます」
私はふたりに部屋の方に上がってもらうよう勧めたが、真純はスタッフだけを店に残す。
「すぐに帰るから、お茶はいらないよ」
そう言いながら、真純はコートを脱ぎ小さなコタツに入った。初めての彼の自宅訪問に、ドキドキしながら私も向かい側に座った。


「この間は、辛い役をさせてしまったね」


彼が、私の態度の理由を知ったのだと思うと、胸がぐっと苦しくなる。
「驚いたけど、理由は魚住さんから聞いたよ。申し訳ないことした。立場をわきまえず、君に迷惑をかけたな」
私は、迷惑なんてかかってないと言った。
「私はただ、プライベートを取引の材料にしようとした一部の商店街の人たちが許せなかったの。その人たちを懲らしめるためには、あんな風に言うしかなくて」
「ああ、分かってる。悪魔、冷血人間、のっとり屋、言われ慣れてるさ」
暢気にクスクス笑う真純に頬を膨らませた私は、『口が悪くて、悪かったわね』と言いながら、彼の肩を叩こうとして手を止める。彼と視線が交わると、私は視線を避け手を下ろした。
「こんなことも誤解されそうね。」
「そうだな」
真純は苦笑しながら、ダレスバッグより資料を出し私に手渡した。
「ということで、今後の交渉は、さっき君が会った課長にしてもらうことにした。会社の中で一番僕に考えが近い人だから、君も話しやすいと思う」


「こうなった以上、もう一緒にはいられないというわけね」


「ああ、そうだ」
気まずい雰囲気が、肌寒い部屋の中に充満する。
「と言っても、来週から海外に行くんだ」
「えっ、遊びに?」
真純は、違うよと言いながら、仕事に行くんだと話した
「ちょっとロサンゼルスまで。向こうにうちのクラブを建てることになってね。ちょっと下見に」
それって、もしかして。凄くいやな予感がした。
「……ここの買収が終わったら、ロスに行くってこと?」
「そうだな。そうなると思う。深入りし過ぎだと社長から言われてるから、海外に追いやられる形になるかな」
「そうなんだ」





凄く心寂しくなった。
彼は、ずっとこの土地にいてくれると思ったが、そうではなかったのだ。真純にとってこの土地は、渡り鳥で言う休憩地。彼の言うとおり、その土地その土地で同情したり恋なんてしようものなら、到底仕事にならない。
きっと、彼との恋愛は深まる前に自然消滅してしまうのだろう。だったら、ふたりの関係が曖昧で良かったのかもしれない……そう思うしかなかった。
「じゃ、そろそろ行くよ。課長と話して納得いく答えを出して」
真純は、コートを手に取ると立ち上がる。




「ねぇ……」


未練タラタラな私は、思わず声をかけた。

― クリスマスは、何してるの?

二週間後のクリスマス。そして、彼の誕生日。彼の居場所だけでも聞きたかった。
だけど……。

「葉子ぉ~!FIEのおじさんが店の中にいるわよ……あれ?真純君もいたんだ」

半分開いた店のシャッターを潜って入ってきた詩織が、顔を覗かせる。
「おや、こんばんは。詩織さん、ますます職業婦人になって。今日のスーツ姿もかっこいいですね」
「それって、嫌味?しっしっ、もう帰りなさい。また葉子に虫がついたって噂されるわよ」
「虫扱いか、失礼だな。さあさあ、踏まれないうちに帰らないとね」
「ひどいわね!」
肩をポンと叩かれながら楽しそうに笑った真純は、私と詩織に手を上げ帰っていったのだった。



結局、真純に何も言えないまま別れてしまった。
私は、こんな気さくに接すことが出来る詩織が羨ましいと思う。土地絡みでなかったら、こんなに砕けて話せるのだ。どんなことをしようが、どんな関係なろうが、何も言われることはないのだ。
私が背負う物、私は初めて重荷に感じた。







「ねぇ……葉子」


詩織が、何度も私を呼んでいた。
「なに?」
「真純君の香り。GUCCIのrush なのね。やっと分かったわ」
「ラッシュ?」
「元彼が使っていたフレグランスと一緒なの。メンズ用よ。すごく懐かしい」
詩織は、想いにふけるように真純が残した香りをすぅっと嗅ぐ。
私も、詩織が言った真純のラッシュを鼻腔に呼び寄せてみた。香りのせいで彼とのキスを思い出してしまうと、きゅんと心が泣いた気がした。











第30話へつづく





GUCCI rush for men。。。あのGUCCIの男性用フレグランス。次回でも書きますが、現在は廃盤で手に入らないそうです。一度香ってみたかった。。(笑)



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目次

私の彼は副社長

登場人物

~出会い編~
1/ 2/ 3/ 4/ 5/ 6/ 7/ 8/ 9/
10/ 11/ 12/ 13/ 14/ 15/ 16/
17/ 18/ 19/ 20/ 21/ 22/ 23/
24/ 25/ 26/ 27/ 28/ 29/ 30/
31/ 32/ 33/ 34/ 35/ 36/ 37/
38/ 39/ 40/ 41/ 42/ 43/ 44/
45/ 46/ 47/ 48/ 49/

~真純くんの事情~
1/ 2/ 3/ 4/ 5/ 6/ 7/ 8/ 9/ 10/
11/ 12/ 13/ 14/

~恋人編~
本家サイトにて公開中(R-15)





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