four seasons ~恋人たちの午後~

気の向くままに文字を綴ります。。。

09月≪ 10月/12345678910111213141516171819202122232425262728293031≫11月

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

私の彼は副社長 28


今日は、説明会の日。


私は朝から念入りに化粧をして、洋服を考える。まるでデートのようなワクワクした気分、一体何年振りだろう。
だが、そんな浮かれた気分は、雲雀のような訪問者によって邪魔されてしまった。


「ちょっと!葉子」


詩織がけたたましい声を上げながら、家へ入って来た。なによと言いながら、私は候補の洋服を身に当て鏡を覗き込む。
「あんた!副社長と抱き合ってたんだって!」
「へっ?」
私は変な返事をすると、鏡に映る詩織を見た。
ふたりの立場上、親友の詩織にも真純と食事に行ってタクシーで送ってもらったまでしか言ってなく……なのに、どうして?
「あんた、土地の買収を受けたの?それはいいけど、商店街ではとんでもない噂になっているわよ。恩田と葉子ができていて、羽並の土地だけ他の倍の値で買収されるってね」

「うそ……。誰がそんな」

私は、詩織に包み隠さず話しをした。
内緒にしたことを詫びるが、彼女もその理由を分かってくれたようで咎めることはなかった。詩織曰く、商店街の人に私たちの姿を見られたようで、噂は尾ひれが付き、広まり続けているのだという。


「噂好きだからね。あの人たちは」


噂の出所を、詩織は知っていた。
私たちを見つけたのは、三軒隣の土地所有者。自営していた店が潰れてからギャンブルに狂い、親戚中にお金を借りまくった挙句、自分の子供の学費や給食費にも手をつけていることで有名な人だった。
そして、その人に入れ知恵を働いたのは、今でも関わりがある商店街の店主の会の数人だったのだ。




「不味いところ見られたわね。多分、今日の説明会で攻撃されて
値が吊り上げられるわよ」
「そんな……嘘なのに」
「お金が絡むと人格は変わるのよ。商店街の人だって、土地をもっと高く売りたいわけでしょう。どんな手段でも使うわよ」
なんだかとても悲しくなった。
今まで、一緒に苦難を共にしてきた人たちなのに、そんな嘘っぱちな噂を流して心が痛まなかったのだろうか?
真純が、仕事とプライベートに苦悩する意味がようやく分かった気がする。私は、胸に当てていた洋服をギュッと握っていた。

「そんなこと、絶対させないわ」

「って、言ったってどうするのよ」

私は、今まで当てていたお洒落な服をやめ、パリッと糊が利いたダークブラウンのスーツを選んだのだった。









『FIEフィットネスクラブスポーツ土地開発説明会』
商店街外れのビルの3階会議場を貸しきった部屋には、予想より多くの関係者が座っていた。私は、その中に入り、多美子の横へ座る。周りから刺されるような視線を感じると、噂が随分広がっていることを知り、憤りを感じた。
噂も流した本人たちも来ていて、こっちを見ながら笑ってる。
それで、意思は固まった。




「詩織から聞いたわよ。いいの……あいつから誤解されても」
こっそりと囁く多美子の言うあいつとは、真純のこと。
室内の前方に見えるテーブルには、三本の飲料水入りのペットボトルとコップ、中央の椅子には彼がいつも持ち歩いている本皮のダレスバッグが置かれていた。私は、切なげに彼の席を見つめたまま言った。


「構いません。私たちのことを、取り引きの材料になんかにさせない」


多美子の同情に似た視線を感じても、私の気持ちは変わるはずはなかった。





無機質な時計が16時を指し、副社長を先頭にFIE関係者が入ってくる。真純の姿を見た私は、スーツの襟を直し、彼をキッと睨みつけた。
「本日はお忙しい中、説明会に足を運んでいただきありがとうございます。まずは、課長より本日の説明会の流れをお伝えし、その後、わたくし恩田から詳細を説明します」
まずは、資料を配られる。
すると、商店街関係者がざわざわと話し始めた。
「ちょっと資料見て!このFIEの駐車場一階は、あの大手のスーパーマーケット 『レオン』が入るのね。うちの魚屋をそこに入れてくれるなんて驚きだわ……あっ、ごめん葉子」
「いいえ、おばさん。無理しなくてもいいんです。私に構わず、おばさんに合う条件だったら買収を受けてもらっていいんですよ」




真純の言葉通り、資料に記載されているFIE見取り図には、店舗のスペースと大手のスーパーマーケットのスペースが入っていた。


― 君の花屋はここ。


もちろん店名など明記されてはいないが、一階に彼の言った店舗スペースが作られていた。彼の出した計画は、店を構える者構えない者、商店街の誰もが納得できる構想となっている。
本当に、彼は救世主なのかもしれない。
その彼を歪んだ噂で、傷つけたくなんかなかった。




「それでは、恩田副社長より土地開発の構想を資料に沿って説明させていただきます」
「では、資料の2ページ目を……」


「ちょっと、恩田さん」


彼の話を折るように、私は立ち上がった。
「あなたなの?私が羽並の土地買収に応じたって噂を流した人は」
真純にとっては、寝耳に水。
こないだと違う私の態度に驚いているようで、彼の瞳は大きく開けられ動揺を隠せないようだった。
「羽並様へは、まだご案内をさせていただいてる途中ではありませんか?プライバシーに触れることですので、買収したか否かは私どもの話すことではありません。何か誤解されておられるのでは?」
もちろん、この返事が返ることぐらい分かってる。私は、真純の言葉に気分を害した演技をした。
「あなたが言わないで誰が言うのよ!私の土地は祖母と母が守ってきた大切なものなの。あなたが、色仕掛けで来ようが何しようが売るつもりは全くないわ!私はそれだけを言いにきたの!何度来たって無駄なものは無駄。じゃ、私は失礼するわ」


「羽並様、誤解です。私どもは本当に!」


心を鬼にする。彼の言葉を無視し、私は薄ら笑いを浮かべた。
「土地買収って、結局はのっとり屋じゃないの。そんなこと平気で出来る人なら噂を流すなんて朝飯前……」
噂を広げていった商店街の人たちの慌てている姿が見えてくるようだった。ひとりでも買収が上手くゆかなければ、この話は消滅する。彼らはそれを分かっているはずだった。
もちろん、ほとぼりが冷めれば説明会にも来て検討するつもり。
だけど、今は噂を流したことを後悔すればいい、心を痛めればいい、私は心で訴えていた。

「でしょ?」

真純の瞳が、きつくなるのが分かる。
私は、彼を睨むと踵を返す。心の中では、なんどもなんども謝っていた。




第29話へつづく









ランキング参加しました♪
(かなりの確立で更新の後押しとなりそうです。。。笑)
にほんブログ村 小説ブログ 恋愛小説へ

スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿


管理者にだけOK

HOME

プロフィール

まるこ

Author:まるこ
オリジナル恋愛小説を運営する
心の景色を文字にするのが大好きな
管理人。
『春夏秋冬』(R-15)

注)広告目的のコメントについては
予告なく削除することがあります。

目次

私の彼は副社長

登場人物

~出会い編~
1/ 2/ 3/ 4/ 5/ 6/ 7/ 8/ 9/
10/ 11/ 12/ 13/ 14/ 15/ 16/
17/ 18/ 19/ 20/ 21/ 22/ 23/
24/ 25/ 26/ 27/ 28/ 29/ 30/
31/ 32/ 33/ 34/ 35/ 36/ 37/
38/ 39/ 40/ 41/ 42/ 43/ 44/
45/ 46/ 47/ 48/ 49/

~真純くんの事情~
1/ 2/ 3/ 4/ 5/ 6/ 7/ 8/ 9/ 10/
11/ 12/ 13/ 14/

~恋人編~
本家サイトにて公開中(R-15)





拍手御礼!

拍手をいただきありがとうございます。皆さんに楽しんでいただけるようこれからも頑張ります!

コメントお礼

ブログランキング
最近の記事
最近のコメント
カテゴリー
お薦めブログ
お気に入りブログ小説

大人向きのものも含まれています☆


 Lovers


上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。