four seasons ~恋人たちの午後~

気の向くままに文字を綴ります。。。

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私の彼は副社長 26


「お父様に、私のことをお話ししたの?」
「……もうこれ以上よそう。話は終わりだ」


真純は父親に私のことをどれだけ話したのだろうか、彼の情とはどの程度なのだろうか、凄く知りたくて訊ねたのだが、話をはぐらかされた。彼の心の内は、やっぱり探れない。
「分かったわ。じゃ、最後にひとつだけ。私はね、真純さんが取った行動が間違いだったかどうかは判断できない。でもね、買収が上手くいって夫婦の生活が安定したとしても、旅館を潰したという後悔は残ったと思うわ……だからと言って、自らの命を絶ったという選択は間違いで、きっとあの世でも、旅館を放棄したことを後悔しているはずよ。だから答えはないの」


「死んでしまったらチャンスも掴めないのにね。あなたもそう思うでしょう?」


私は、湿っぽくなった話を終わらせるため、笑顔で真純に問いかけた。


「ああ」


真純は、私と視線を合わせることはなかったが、真一文字に結んだ唇を緩め返事をしてくれた。
そして、グラスの中でゆらゆらと揺れる焼酎を口に流し込んだのだった。









あれから、私たちは買収の話しをやめてスポーツクラブ談義に花を咲かせていた。彼がインストラクターとしてバイトをしていたときの話が面白く、あっという間に時間は過ぎた。




「ううっ、寒いわね」
夜の11時、ほろ酔い気分で外に出てびっくりする。
外気温は随分下がっていて、コートもない軽装の私は、ぶるぶるっと背筋が震えた。
「車なのに、いい気になって飲んでしまった。ごめん、タクシーで送るよ」
「いいわよ。電車で帰れるわ」
「駄目だ、風邪ひくだろう。僕も帰らないといけないから。ほら、これ着て」
ふわりと、真純のジャケットが肩にかけられる。
檜とラベンダー……彼の香りを纏ったような感じで、ドキドキと胸が高鳴ってゆく。


「そして、はい……」


彼は、温かいよと言いながら腕に隙間を作ってくれた。
驚く私に「こんなところに、商店街の人がいるわけないでしょ」と言いながら片目を閉じる。
「は、はい……」
なんだか、意識しまくりのぎこちない返事しか返せない。
私は、開けられた腕に自分の手をそろりそろりと通す。パフンと脇を締められると、密着した部分から彼の体温が伝わってきた。


「ほんとだ、あったかい」


思わず言葉が出てしまう。彼との密着は、私の顔まで温かくした。









どきどきどき……


なぜ、なぜ……?


心はもう大騒ぎ、大フィーバーをおこしている。
タクシーに乗り込んだ私は、今度は肩を抱かれ、彼から引き寄せられたのだ。
運転手から、バックミラー越しに意味深な視線を投げかけられても、真純はその手を離そうとはしなくて……。
あまりの緊張でカチンコチンに身を固めていた私だったが、カーブに差し掛かると、その向心力に乗るように身体の力をふっと抜いた。
彼の胸元に埋めた頬は、真純の身体を感じていた。
シャツの上からでも感じる胸板の厚さに、昼間のプールで感じた裸体を思い出す。息をする度に上下する胸とアルコールの匂いが、夢でないことを教えてくれていた。





「その角を曲がってもらって、三つ先の街灯の下で止めてください。ひとり降りますので」
あっという間に、自宅に着いた気がする。
このまま、どこか遠いところへでもドライブに行きたいと思った。心はどきどきして苦しいけど、彼とのふたりきりの時間が消えてしまうのはもっと苦しかった。


「送ってくれてありがとう」


タクシーより降りた私たちは、向かい合った。
私はハッと気付き、真純のジャケットを脱ぎ手渡す。彼の温かい手に触れると名残惜しさが増してゆく。でも、もうお別れ。
「今日はスポーツもしたし、気持ちよく酔えたわ。じゃ、来週の説明会で会いましょう。おやすみなさい」
無言のまま一途に見続ける真純の瞳に照れ笑いを返した私は、踵を返そうとする。だが、そんな私の腕は強引に引かれしまい、あっという間に彼の胸に包まれた。
背中を覆う彼の腕の感触に、自分が抱かれていることを知る。驚き彼を見ると、大きい指で顎を引き上げられ唇をふさがれたのだった。



どくん


心臓が、ショックで止まったんじゃないかと思った。



彼の引き締まった唇が柔らかな私の唇と交差する。彼の閉じられた瞳と長い睫毛が目の前に見えた。
彼との初キスは、まるで初恋を思い起こすような、淡く優しいキス。
私は、彼のキスに酔いしれるようにゆっくりと目を閉じたのだった。





第27話へつづく





向心力。。。円運動をしている物体が受ける慣性力の一。
円の中心に向かって働き、運動の速度が一定のときは物体の
質量に比例し、円の半径に反比例する。対→遠心力。



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目次

私の彼は副社長

登場人物

~出会い編~
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45/ 46/ 47/ 48/ 49/

~真純くんの事情~
1/ 2/ 3/ 4/ 5/ 6/ 7/ 8/ 9/ 10/
11/ 12/ 13/ 14/

~恋人編~
本家サイトにて公開中(R-15)





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