four seasons ~恋人たちの午後~

気の向くままに文字を綴ります。。。

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私の彼は副社長 24


「じゃ、ちょっと痛いけど。ゆっくりやるから」


「いたたた……」
彼は、医務室のベンチに私を座らせると踵を固定し、足のつま先を持って押し上げてくれた。
私は、目の前に見える彼の俯く姿と、パープルのジャージジャケットから垣間見える胸板への視線を外せない。
それに心臓は、はちきれんばかりにドクドクいっていた。




あの後、私をプールサイドまで誘導してくれた真純は、私の身体をひょいと抱え上げると医務室まで連れて行ってくれたのだ。
じかに触れた逞しい彼の胸板の感触と温かみに、私の脳は混乱を起こし、オーバーヒート寸前で。
……で、痛みを訴えながらも下ろせと暴れる私に、彼はこう言った。
『みんなに誤解されたくないんでしょ。じっとしてて、病人は病人らしく!』
病気ではないし、十分に誤解される姿だとは思うのだが、彼は下ろしてくれなかった。
一体彼は何を考えて、平気でこんなことをするのか。
しかし、どうあがいても男性の力に勝つことは出来ないので、仕方なく彼に抱かれることにした。
酸素不足と興奮とが入り混じった、荒いままの私の息。
それはきっと、彼の胸元に届いていたと思う。

 



「酸素です。白いラッパの部分を口に当てて、大きくゆっくり息を吸ってください」
真純と同じジャージを着たスタッフから酸素を貰った私は、彼の言うままに酸素を吸ってゆく。大きく吸い上げると、肺の中に新鮮な空気が入っていくようで気分が少し楽になった。真純は、そのスタッフに蒸しタオルを持ってくるよう言うとキッと私を睨んだ。
「準備運動もせずに、いきなりクロールなんか泳ぐからだ。それも、素人が息継ぎもせずに25M泳ごうなんて、自殺行為」
「ご、ごめんなさい」
笑われるどころか、彼から真剣に怒られる。嫉妬などという低レベルなことから、大きな失敗をしてしまった私は、かけられた毛布の中に身を埋めるように背中を丸めると、彼を申し訳なさそうに覗き込んだ。


「まったく、心配かけて」


真純は、ため息をつきながら足の処置を続ける。恐々な視線を向ける私にようやく気付くと目を柔らかく細め、そして微笑んだ。
「クロールはね。呼吸法にこつがあるんだ。それを覚えると、すごく楽に泳げる。今度教えてやるよ」
「え、えぇ……」
ついつい、彼の優しい声に導かれるようにOKの返事を出してしまっていた。でも、意思に反したものではない。
プライベートで、また彼に会えることを期待したからだった。





「痛みがなくなってきたでしょう?」
「本当ね。すごい」
かなり長く彼から処置をしてもらったと思う。
真純は、当てていた蒸しタオルを外し、私の足の筋肉の状態を確かめると軽くポンポンと叩いた。
「今日は、もう上がろう。お腹も空いたし、食事に行こうか」
真純は、私に手を差し伸べる。
私は、彼のがっしりとした手を取ると立ち上がった。












ぱちぱちぱち……。


捻った白手ぬぐいを巻いた店長が、私のすぐ目の前で煙に巻かれながら焼き鳥を焼いている。
隣には、スーツのジャケットを脱いだ真純がいて、グラスに並々と注がれた焼酎を飲んでいた。ネクタイを外しシャツの第一ボタンを外している彼、白いシャツ姿もなんだか眩しく見える。
「はい、恩ちゃんと彼女。とり皮に手羽にバラだね」
「ありがとう。おやじ」




クラブから数件先の、この焼き鳥屋。
この街には、あまりお洒落な飲食店がないといいながら連れてきてもらった。
私はライム酎ハイ、彼はこれで2杯目の焼酎で、焼き鳥と店長お勧めの一品料理を食べている。



「で…どう?僕を潰す材料でも見つかったかな?」



今まで、この近辺のお洒落スポットを話してくれていた真純。ようやく、本題といった感じで苦笑した。
「ええ!見つかったわ。たくさんね」
私は、すきっ腹にグイッと入れてしまったお酒で酔っているのかもしれない。ふわふわとした気持ちでクスクスと笑うと、真純をじっと見据えた。


「とんだ娯楽施設だということが分かったわ」


もちろん、それは本心ではなかった。
彼を潰す材料など結局ひとつも見つからないまま、逆にFIEのよさばかりを知って帰って来たのだ。
私は、いつも詩織から注意されるのが、酔うと出てくるこのからかい癖。……で、すぐにバレるのが売りだ。
私は、自分の胸をポンと叩くと、いたずらっ子のように微笑んだ。
「トップも従業員も気が利かないし、洗面所も更衣室も汚いし、遊びに来たおじちゃんおばちゃんばっかりで、本当に娯楽だった。もう、すぐにでもあなたを潰せるわ。任せといて!」
もちろん、徹底的に教育指導している彼がこの嘘に気付かないわけはない。
真純は、一瞬驚いたように大きく目を見開いたが、すぐに目を細めぷぷっと噴出した。
「そっか、いい日になったな」
「本当にいい日よ。敵内偵察のつもりが、まんまと罠に捕まってしまった……みたいな感覚ね」


私は、凄く気分がよかった。


半分になった酎ハイをグッと一気飲みすると、くくっと笑う。
「まっ、ということで罠に嵌ったついでに、もう少しあなたの考えを知ってみたいと思う。売り言葉に買い言葉なんかじゃなく、自分の意思で次回の説明会に出てみるわ」


「えっ?本当に」


彼にとっては、意外な言葉だったのかもしれない。真純は口を開けたままポカンとしていた。
「だから、はい酎ハイお代わり。気が利かないわよ副社長」
「あ、ああ」
真純は嬉しそうな表情に変わり、私から酎ハイのグラスを受け取る。ちょっと彼の視線が外れた隙に、私は言った。
「あなたの目指しているものが、娯楽施設でないと分かったのが、今日の一番の収穫だわ」


「ありがとう。葉子さん」


真純は、酎ハイのお代わりを頼むと、スケジュール帳を開きメモ用紙を破りとる。
彼はちょっとだけ営業と言って、それに四角を描き始めたのだった。





第25話へつづく









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目次

私の彼は副社長

登場人物

~出会い編~
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38/ 39/ 40/ 41/ 42/ 43/ 44/
45/ 46/ 47/ 48/ 49/

~真純くんの事情~
1/ 2/ 3/ 4/ 5/ 6/ 7/ 8/ 9/ 10/
11/ 12/ 13/ 14/

~恋人編~
本家サイトにて公開中(R-15)





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