four seasons ~恋人たちの午後~

気の向くままに文字を綴ります。。。

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私の彼は副社長 22


真純は、静かなスタートを切った。
ドルフィンキックで水中を突き進む。
ストロークを始めた彼の身体は綺麗なストリームラインをとり、水面をうねり進んでゆく。
さっきの背泳とは全く違う……、水を味方につけたエネルギッシュで豪快な泳ぎに、私は魂を揺さぶられるような感覚に陥った。
彼はまるで、海を渡る野生のイルカの様だった。




「さっきの副社長が泳いでいるわ」
「すごく綺麗なフォームね。まるで、外国の水泳選手みたい」
私のすぐ横のレーンで、おばちゃんたちが騒ぎ始めていた。
「私もバタフライだけは泳げなくてね。あんなに楽に泳げたら気持ちいいだろうに……」
おばちゃん同士の話はあまりにも大きすぎて、私の耳にも聞こえてくる。
彼女曰く、バタフライは、4泳法の中で最もエネルギーを必要とする泳法なんだという。だから、水の抵抗を避ける技術を身につけることが、より速く泳ぐポイントなのだと話していた。
……と、言われても私には何のことだかさっぱり分からないんだけど。



「はあ、もう100行ったわよ。まだ行く気?ねぇ、ちょっとあなた。彼の恋人?」
「はいっ?」
いきなり、肩を叩かれた私は、おばちゃんの輪の中に引き込まれることになる。何を聞かれるのかと思うと、ちょっと怖くてドキドキした。
「いえ、ただの知り合いです」
「彼、ここの副社長でしょ。何M泳ぐの?」
私は、彼女たちに200M泳ぐのだと言った。彼が競技大会の優勝者だと説明すると、すごく驚く。
「でも、皆さんも泳ぎはマスターしておられるんですよね。羨ましいです」
「羨ましい?」
本当に彼女たちは、泳ぐのが好きなようだった。私の言葉に気分をよくしたようで、何が泳げるのか自慢大会のようになる。そんな話の中、更衣室で真純を気に入ったと言っていた女性が、話し始めた。
「私たちもここに来た時は全く泳げなかったのよ。この人、里佳さんなんてね。5年前まで、歩くのに不自由していたのよ」
彼女が紹介した人は、真純のフォローをしていたあの女性だった。





いまや、3泳法をマスターしているという里佳というこの女性。
脳梗塞の後遺症で半身に麻痺が残り、運動障害を起こした。辛すぎるリハビリも断念し身も心も疲れきった頃、医者から水中歩行を勧められ、その当時近所に出来たばかりのFIEの会員となり、毎日通っていたのだという。
「ほら、若い人に話してあげなさいよ」
そう言われて、里佳は話を始めた。
「ここはね、他のスイミングクラブにはない水中運動プログラムという時間があって、運動障害がある人のためにいろんな機能訓練をしてくれるの。そんなこんなで、少しずつ体が動き始めるとなんだか泳ぎたくなってクロール初級というプログラムから習い始めたのよ。後遺症は若干残っているけど、これだけ動けるようになってほんと生き返った気持ちだわ」
FIEは、健常者と同様、身体に障害を持った人や体の機能が衰えた人にもとても優しいクラブだと里佳は話した。パンフレットに書いてあるということだが、リハビリなどを求める人のためにも、身近に利用できるクラブを増やしたい……というのがFIEトップの思いらしい。



ああ、意外なところから、真純の目的を知ることとなった。
FIEをこよなく愛する利用者、その言葉は一直線に私の心の中へと入ってゆく。
「私、スポーツクラブってただの娯楽施設だとばかり思っていました」
「あなた若いのにおばちゃんみたいな考えね。あそこの歩行レーンで歩いているグレーの水着のおばあさんは、肥満で関節痛に悩まされて、でもここに来てあんなに痩せてね。そう、あそこのおじさんは、腰椎ヘルニアの手術をしたあとに、医者からここのプールを勧められたらしいわよ。体力をつけるための人も多いけど、いろんな悩みを克服するために来ている人が多いのよ」
「そうなんですね」
私は、最終ターンで戻ってくる真純を見た。


― 僕と正々堂々戦え!資料も見ず、ただただ反対ばかり言っていないで、敵の懐に飛び込んで相手を知ってみたらどうだ……。



彼が、私に言った言葉を思い出していた。
確かに、私は強面の従業員から貰った資料をチラリと見ただけでそれ以後は何を言われようとも破棄していた。だが、今のあの土地に計画されているのは、ただ若者が娯楽する施設ではなく、本当に悩んでいる人にとっては、救世主のような施設なのだ。
今ほとんど遊ばせたままのあの土地、需要が少なく閑古鳥が鳴いているような土地。
FIEだったら、その土地を人々のために有効活用してくれるのかもしれない。
真純は最後の25M、スタートのときよりもスピードを上げ泳いでくる。一生懸命な彼の姿を見ていると、彼の望みをもう少し知ってみてもいいかなと思った。




真純は、残った力を振り絞り壁にタッチする。
彼は水面から身体を出すと、ゴーグルを持ち上げ、乱れた息を整えるため大きく深呼吸した。

「はぁっ……」

呼気とともに彼の声が漏れ出す。
意識しているせいか、それは甘い吐息のようにも聞こえ、私の胸をきゅんと切なくしていた。





第23話へつづく





ストローク。。。水泳で、腕で水をかくこと。また、そのひとかき。
ストリームライン。。。流線型



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コメント

バタフライ

バタフライを泳ぐ男性の姿はかっこいいですよね。
私は高校時代まで水泳部の選手だったのにもかかわらず、バタフライが泳げない人間なのです・・・
それに、バタ足が苦手でクロールより平泳ぎの方がタイムが早いという特殊な人間です(焦っ。。。)
最近は肌が安定していないのでジムに行けてませんが、真純さまの泳ぐ姿を拝読したらば、泳ぎたくなりました。
別にジムは泳ぐだけでなく、マシーンを使ってもいいのですが何故かプールにこだわる私。
時々見られるインストラクターのおにいちゃんの水着姿が目的だったりして(笑)
最近の悩みは、1キロでバテてしまうことです。
インストラクター並みの真純さまの隆々とした上半身の描写をもっと~~~~っ!って思ってしまいます♪
毎回更新楽しみにしています。
でもお体に無理のないように更新してくださいね。

泳げる男はかっこいい。。。

zaziさ~ん♪

いいですね、バタフライを泳げる男性って。。。うふうふ。
私は、もう泳げなくなったので、今の真純の描写は子供のスイミングスクールのときに別レーンで泳いでいる選手の方を見てかいています。。。あっ、残念ながら女性ですけど(笑)
『海を渡る野生のイルカの様』思いのままを描かせてもらいました♪

いやいや、私ももちろん子供ではなく(笑)
インストラクターのおにいちゃんばかりを見てますよ~~。絶対、怪しいおばさんだと噂されていそうですが。。。
多分それは、次回の更新あたりに反映してしてきそうです(笑)

いや、平泳ぎもかっこいいですよ。あの呼吸をする際の水面からでた上半身と腕の辺りが好きですね~~。うぉぉ~1キロですか~~zaziさんに脱帽です☆

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Author:まるこ
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『春夏秋冬』(R-15)

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目次

私の彼は副社長

登場人物

~出会い編~
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~真純くんの事情~
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~恋人編~
本家サイトにて公開中(R-15)





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