four seasons ~恋人たちの午後~

気の向くままに文字を綴ります。。。

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私の彼は副社長 20


「FIEは、1階が受付で2階から上がスポーツ施設になっているんだけど、君の商店街に建てる予定のビルはちょっと志向を変えてみたいと思ってるんだ。……こんにちは、いらっしゃいませ。……お疲れ様です、いい汗かきましたか?」
彼もそうだが、この施設のスタッフは客に対し清々しいほどの挨拶をする。



「あっ葉子さん、このベンチでちょっと待っていて」
この施設に入った途端、真純の雰囲気にぴんと張り詰める空気が加わった。私に施設の説明をしながら、彼の意識は客や施設内へも向けられている。極めつけが廊下の端にほんの少しだけ落ちていた水だった。
真純は、その水にティッシュを乗せた後、すぐに近くにある内線電話で、支配人を呼び出した。普通なら、気がついた人がすぐに拭けばいいという話。わざわざ呼び出す必要もないのではないかと思いながらも、彼の動向を伺うことにした。




支配人に話をする真純の表情は、物凄く真剣で震え上がるぐらいに威圧感がある。廊下の端でほんの少しのものだから、たまたま気づかれずにいただけではないか。お客のいる前でこうも従業員を怒らなくてもいいのに、そう思わせるくらいだった。
「……このクラブは、ご年配や体のご不自由なお客様もいらっしゃる。特にサイドは手すりが付いていて、その方たちの往来もあるわけだからこのくらいの水でも、十分に滑るんだ。クリーンスタッフだけでなく従業員全てに注意するよう徹底してくれ」


「申し訳ありません副社長、従業員一同徹底させていきます」


どう見ても、真純よりも年上の男性が、自分の息子ほどの副社長に頭を下げている。客に見られながらのこの状況は、仕事といえども支配人にとっては屈辱的なものだろうと察した。
そして話が終わると、支配人は持ってきた雑巾で床を拭こうとしたのだが、それを真純は制止した。
「後は僕がします。マネージャーは、仕事に戻って」



支配人は、あきらかに恐れ多いという顔をしながら自分がすると言い張った。だが、真純は首を横に振ったのだ。
「僕は、マネージャーに掃除をさせるため呼んだのではないですから。現情を知ってもらい皆に報告してもらうためです。すぐに仕事に戻ってください」
「は、はい。申し訳ありません」
深々と礼をすると支配人は、踵を返す。それを見届けると真純は私の元へと帰って来た。
私の顔を見ても仕事の表情を崩さない彼、怖さでちょっと声をかけれない。
「ちょっと持っててくれる」
そう言うと、大きなジャケットを脱ぎ私に手渡したのだった。









真純は、背中を丸め床を雑巾で拭いている。スーツを着ている彼が掃除をしているなんて、すごく変な構図だ。


「しつこいようだけど、あなたって冷たいんだか優しいんだか分からないわ」
私は彼の広い背中を見ながらそう言った。彼は、ごしごしと床を拭きながら返事する。
「お客様の前で、あんなに叱って最低な奴だと思った?」
「まあね。どう見たって、あなたのお父さんくらいの年齢の人よ。屈辱的だわ」
「仕事に年齢差なんて関係ないと思うけど?悔しいと思うなら、従業員の教育を徹底すればいい話だ。各支店のマネージャーはね、僕らトップの代理でもあるんだ。常に任されているという意識を持ってもらわないと困る。床が汚れているのにひとりも気付かなかったというのは、お客様のことも気配れてないということじゃないだろうか」
それはそうかもしれない。
「だからといって、こんなところで。客もひくわよ」
「そうだろうか……」
ぽつりと呟いた真純は、ようやく腰を上げると、雑巾を洗うためトイレへと入っていったのだった。




    ******
 


『中で待ち合わせ、25Mプールの前だ』
『えっ、あなたも入るの?』


『今日は昼からオフだからいいの』
『プライベートじゃ辛いから、付き合わないんじゃない』


『いいじゃないか……誤解されないようにすればいいだけなんだろう』
『それは、そうだけど』
そして、チラリと私のバッグに目を落とした真純は、突然こう言った。
『ちょっと聞くけど……もしかして、水着の上にTシャツなんて着るつもりじゃないだろうね。葉子さん』
『えっ?どうして。いけないの』
『どんなに新品のTシャツでも、ここでは不衛生ととるんだ。水質を悪くしないためだよ。そんなに、肌を晒すのが恥ずかしい?』
私は、彼の視線が気になって慌ててバッグを覗き込む。ファスナーの隙間から覗き込むTシャツをそそくさとバッグにしまった。


『そうよ。スクール水着だから恥ずかしいの。絶対、見ないでよ』
『はいはい、じゃ、君の顔だけ見てます』
くすくすと真純は笑う。


『それも嫌なんだけど』
『じゃ、どこを見たらいい?よその女の子でもいいってわけ』



      ******




更衣室に入る前にそんなやりとりがあった。なんかいちいち癪に障る言い方をする真純、実は私の気持ちを知っていて、もて遊んでいるのじゃないかと思ってしまった。



更衣室はとても清潔感があり、一番気になる化粧コーナーも髪の毛ひとつ落ちていない。
彼が言ったまず入ったら、化粧台を見てという言葉が良く分かる。

『いやぁ、さっきね。すごいもの見ちゃった』

すると、隣の更衣室から、熟年風の女性の会話が聞こえてきた。その内容は、さっきの真純と支配人の事のようで。
「どう見ても自分の息子みたいな人から、ここの支配人が物凄い剣幕で怒られていたわよ」
「あの若い人、副社長よ」
「えぇっ、あんな若くていい男が副社長?インストラクターかと思った」
「なんだか、水がこぼれていたとかで注意してたみたいだけど、確かに危ないわよね。若いのによく気が利くと思ったわよ」
「でも、嫌じゃない?私たちで言うと20歳ぐらいの女の子から怒られるわけでしょう?」
 ほらほら言ってる。私は内心そう思った。まだ年の若い自分でさえもそう思うのだから、この人たちがそう思うのも無理ないと思った。FIEのイメージダウンだ。



「だけどここって、髪の毛ひとつ落ちてないし、足拭きマットはいつも乾燥してるし、それは、上の指導がちゃんと行き届いているということなのよ。水だって、もしこけて骨折でもしたらすごい責任問題になるから、シビアになるわよ。でも、私ずっと話し聞いていたけど会員のことを一番に考えているようで悪いトップじゃないと思うわ。ただ叱って追い詰めるんだったら、掃除だって支配人にやらせてる。でもビシッと言いながらも、見つけた自分がせっせと掃除をやってるなんて、従業員と対等な立場にいる証拠よ」
「確かにそうね。気にしてもらってると思うと、私たちも安心して施設が使えるわ。一気にファンになっちゃいそう。顔も素敵だったし、久々に大ヒット」


おばちゃん、恐るべし。


彼女たちは、あのやり取りをずっと聞いていたんだ。
このくらいの熟女の噂話は、物凄い勢いで広まる。よいことは、うまいこと広がらないが、悪いこととなるとまるで火がついたように噂は飛んでゆくのだ。逆にああやって悪いところはその場で注意する方が、従業員の意識を目覚めさせ、お客に対しての誠意となるのかもしれない。



なんだか、敵内偵察などといわれながら、まんまと彼の策略に嵌り込んでいる気がする。
すごく、やばい気がしていた。





第21話へつづく








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目次

私の彼は副社長

登場人物

~出会い編~
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45/ 46/ 47/ 48/ 49/

~真純くんの事情~
1/ 2/ 3/ 4/ 5/ 6/ 7/ 8/ 9/ 10/
11/ 12/ 13/ 14/

~恋人編~
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