four seasons ~恋人たちの午後~

気の向くままに文字を綴ります。。。

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私の彼は副社長 13


「はい、ドライバー。……オイルひくからスプレー缶を取ってくれ」


脚立に上って作業している真純は、私を助手のように扱っていた。
さっきふわりと抱え上げられた彼の手の感触が、胸に程近い脇にまだ残っている。
それに加え、彼の指示した物を渡すたび、彼の手に触れてドキドキが増していった。はっきり言って、心臓にも精神的にもよくない状況だった。
でも、男性がいると、こんなことも簡単にしてくれて頼もしいなぁとも思う。私の父は、物心ついた頃から父親らしいことなどしてくれていなかったから、男性の頼もしさをはじめて感じていた。






「はい、終了。年に一度はオイルアップが必要だよ」
真純は、脚立より降りシャッターを開けると、埃まみれになったスーツをパタパタとはたきながらスプレー缶を私に渡した。
「随分、古い家だな。確か、戦前に建てられているんだよね。隣町は空襲で焼けたみたいだけど、ここはほとんど残っていたんだ。すごいよな」





土地を買収するにあたり、彼はこの土地について調べていたのだろう。真純は近くにあった柱を軽く叩きながら、呟いた。
「ええ、ここに店を建てて一年後に戦争が始まったって聞いてるわ。戦火にも負けなかった店、ところどころはボロがきてるけど、まだまだ十分に使える店よ」
「確かにね」
真純は、特に言い返すこともせず、相槌をうってくれる。敵味方など忘れてしまいそうな平和な会話に気分がよくなる。
「私はね。小学生の頃は、その丸椅子に座っておばあちゃんから花の名前を教わっていたの。中学生の頃は、花言葉を覚えていたわ」


ちなみに…


そう前置きして、私は真純の誕生日を聞いた。
話の流れでなんとなくのつもりだったが、よくよく考えてみるとすごく積極的なことのようにも思えて。だが、彼は穏やかな表情のまま答えてくれた。
「僕は、クリスマス生まれ12月25日で25歳になるんだ」
「25?」
あと二ヶ月ほどで誕生月だ。誕生日は私のほうが早いけど彼と同級生となる。なんだか嬉しくなった。
「12月25日は、ポインセチア。花言葉は『私の心は燃えている』よ」


「へぇ、すごい」


真純は大きな瞳をいっぱいに開き、屈託のない笑みを見せた。
まるで、プレゼントを開いた子供のように、感動と嬉しさの混じった表情。いろんな表情を見せる彼の中で、一番愛嬌のある顔に違いない。
「じゃ、君は?365日全部知ってるのか?」
「さすがに全部は覚えられなかったわ。だから、特別な日だけ覚えたの。で、私は4月13日で25歳になった。花言葉はね……」
そこまで言いかけて、はたと言葉が止まった。





実は私の花言葉は、『あなたを愛します』だったのだ。
女同士だったらバカみたいに笑って終わりだけど、さすがに好きな人を目の前にして言える言葉ではない。これじゃ、愛の宣誓だ。


「さぁ、なんだったかしら?」


しらばっくれることにしたかったが、ここまで言って彼が納得できるはずもなく。
「なんだよ。僕だけ聞いて、君は教えないって言うのか」
やっぱりそうきた……。
自分で墓穴を掘ってしまって自業自得だと思うしかなかった。
「私の花言葉は……」
相変わらず、興味深げな彼の視線が飛び込んでくる。避けられそうもない彼の視線を受けながら私は言った。




「あなたを愛します……」
 



目の前の真純の表情が一瞬止まったような気がした。やっぱり引かれて最悪だと思った。
「……という言葉よ」
あえて花言葉を強調する。同時に、『軽くかわしてよ』と心の中で叫んでいた。その心を知ってか彼は、表情を柔和に崩した。
「驚いた。本当に告白されたかと思ったよ」
冗談で流してくれた彼の言葉にホッとしながらも、異性としてみてもらえない空しさも味わうこととなった。
「ば、馬鹿ね。花言葉って言ったじゃないの」
私は、紅くなる頬を隠すために踵を返し、工具を元に戻すため店の奥へと入っていったのだった。







「脚立は、外でいいんだよね」
「ありがとう。助かりました」
真純は、パンパンと手を叩きながら店へ戻ってくる。だが彼は、店の前で足を止めると、店の中と外をくるりと見回した。

「本当にもったいないんだよ」

えっ?主語のない突然の彼の言葉に、私は不思議そうな顔をする。
「このお昼の時間。破れたアーケードから光が入って来る事は知ってるよね。だけど、見て。僕はもう40分ほどこの店にいるのに、自然光が入らないんだ。店の造りも古びて暗いし、せっかくの花の色が、くすんでいる。確かに花束を渡すときってほとんど室内が多いから、蛍光灯の光だけでも十分に色は掴めるんだけど。僕はね、店に自然光を取り入れたもっと雰囲気のある店にしたらいいと思う。君の腕もなかなかのものだし、このままでは、商店街とともに自滅の道を歩むことになると思うよ」





何を言い出し始めると思ったら、そんなこと。
良いこと言って追い出そうという魂胆なのだろうか。詩織の言うとおり営業が始まったというのか。店を立て替える予算なんてないこと、貸してくれる銀行もないこと、店を見たら分かるでしょう?
「手伝ってもらったからって、買収の話に乗るなんてことしないわよ」
真純は、呆れたようにため息をつく。
「そんな考えはないさ。でも君、頑固な人だな。これ以上美味しい話はないと思うんだけど」
彼は、そういうと踵を返し店を出て行ったのだった。




「やっぱり、営業か……」
甘いマスクに取り込まれそうになっていた自分に活を入れる。私は、心の中であっかんべーをするとテーブルに置かれた資料をゴミ箱に捨てたのだった。







第14話へつづく





『オイルアップ』=シャッターのメンテナンスのひとつ。レール部分に機械用さび止め潤滑油を塗ること。



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(かなりの確立で更新の後押しとなりそうです。。。笑)
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コメント

頑張れ~~v

こんばんはvv

ブログ小説で活躍してるとは!
実は数日前から一日一回、ぽちっと投票してます。応援してるので頑張って下さいね。
ちなみに5位のブログさんもお知り合いなんです。
ベスト10に二人知り合いがいるというのも、凄いなあと思うのでした。

ただまる子さんは、倒れる寸前まで頑張っちゃう人だと思うので、ペース配分を間違えないようにしてくださいね(懇願)

お仕事始めて、まだ体がなれてないと思うので、無理は禁物です。
いえでも、若いから大丈夫?
また伺いますね♪

ありがとうございます~~☆

きゃ~~♪怜さ~ん☆
え~~~、うわぁ、そうだったんですね~~♪
一日一回ポチリと応援していただいて
感激です~~~嬉しいなぁ。。。


今年になってちょっと気分を変えるためにブログ小説を書いてみることにしたのですが、ほんとにいい気分転換になっています(笑)
おぉ、5位のブログさんともお知り合いなんですね♪すご~い。
やはり、上位にランキングされているブログさんは読ませ方を知っておられるなぁ。。。とこっそり訪問しては、唸ってます(笑)まだまだ、勉強あるのみですね♪


おおお、怜さんには私の性格がバレているようで(汗)これまた参った(笑)
仕事に慣れない分の葛藤と焦りが、最近出てきてて(3時間なのに??)結構へばっています。でも、やっぱり書くのは好きみたいなのでこればかりはやめられないですね(笑)
でも、怜さんの仰るとおり無理はしないように気をつけますね♪♪


怜さんの新連載のほうも、楽しみにしていますよ~~!執筆に勢いがつく良いきっかけになるといいですね☆☆


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まるこ

Author:まるこ
オリジナル恋愛小説を運営する
心の景色を文字にするのが大好きな
管理人。
『春夏秋冬』(R-15)

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目次

私の彼は副社長

登場人物

~出会い編~
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~真純くんの事情~
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11/ 12/ 13/ 14/

~恋人編~
本家サイトにて公開中(R-15)





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拍手をいただきありがとうございます。皆さんに楽しんでいただけるようこれからも頑張ります!

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