four seasons ~恋人たちの午後~

気の向くままに文字を綴ります。。。

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私の彼は副社長 11


― あんな男のために、花束なんか作らなくてもいいじゃない。


詩織は、そう言いながら仕事に行ってしまった。
確かに、彼の目的を知ってしまったのに、花なんてアレンジする必要もない。彼が今まで必要としてきた花束たちも、本当に飾られたのかさえ怪しいものだった。だけど、花束を作るのは副社長のためじゃなく、花屋のプライドのためだと言い聞かせることにした。


彼は、今何をしているのだろう?


やけに背後が静かで、はさみで茎を切り落とす音だけが響いていた。
もしかして帰ったんじゃないかと心配になった私は、アレンジの手を止めると、はさみを戻す振りをして彼の姿を視界の隅に入れてみる。真純は、店の中にある丸椅子に座り……じっとこちらを見ているように思えた。
もう少しだけ……自分の体を彼の方向に向けると、恩田真純の全体像が見えてきた。
彼は丸椅子に座ったまま、腕を組み壁に寄りかかっていた。


― 寝てる?いや違う……。


茶色い髪は、彼の目元を隠していた。
スッと通った鼻は、まるで異国の人のように綺麗な稜線を描いている。身体には合わない小さな丸椅子に、バランスが取り難そうな長い脚は品よく組まれていて……、何度見ても完璧な姿だった。
だけど、なんだか彼の姿には違和感があった。




それは口元だった。
キュッと真一文字に結んだ唇。休息をとっているはずなのに、緊張が抜けきれていないのだ。唇だけが彼の精神を映し出していた。きっと、仕事中の彼は、四六時中こうして気を張って生活しているのだろう。
今作っている花束は、彼に向けてのメッセージであるけれど、彼が見て心が休まるような花束にしたい……そう思った。
彼から騙されているとわかっても、それでも彼を想い花をアレンジしたい…それが本音だった。



私の視線を、彼は感じたのかもしれない。
真純は、ゆっくりと瞳をあける。
茶色いビー玉のような瞳がこちらに向けられると、眩しさで細めた私の視線と絡まった。


「もう、出来た?」


 ドキン……。


心臓が跳ねる様な振動を感じた。
私は彼から急いで視線を外すと、淡いピンクの紐組みを花束に巻きつける。
「出来上がりました。今日は小さい花束ですので、ご自身のデスクにでも飾ってください」




それは、桜草とかすみそうで作った花束だった。
その花を椅子から立ち上がった彼の胸に押し付けると、くるりと背を向ける。
「かすみ草の花言葉は、切なる喜び、親切。私の店に対する思いです。そして、桜草は、若い時代の悲しみ……そして、勝利です。御代はいりません」
その花束に、こっそり癒しの細工を入れたことは隠したままにする。
私たちの間に、しばしの沈黙が訪れた。




この沈黙はなんなのだろうか、彼自身の罪悪感の表れだったらまだ救われるかもしれないと思った。私の気持ちを弄び踏み滲んだこと、少しは後悔して欲しい。だが、彼が返した言葉は意外なものだった。
「ありがとう、早速僕のデスクに飾らせてもらうよ。でも、勝利者は僕だ。挑戦的になればなるほど、手中に落ちてゆく君の姿が見えるようだよ。これからもよろしく。葉子さん」


「な…!」


彼は私の背中にそういい残したのだ。その言葉はゲーム感覚にしか取れなかった。敵呼ばわりといい、どうして彼はこんな言い方しか出来ないのだろうか。
「落ちたりなんかしない。ふざけないで!!」
私はくるりと向きを変えると、消え行く彼の背中に大きな声を上げていた。







私は何も考えたくなくて、ゴミを捨て始めていた。切り取られた葉や茎がバサッバサッと音を立てながら、ゴミ袋を入れたダンボールへと入ってゆく。
すると、はさみとテーブルの間に差し込むようにお金が置かれているのを見つけた。
それは千円札で、真純が置いていったものだとすぐにわかった。
「これは、もしかして……」
紛れもなく花代として置かれたものだった。
私は、そのお金を絆創膏を貼った指先でバラバラにする。そして、3枚だったその札に指の動きを止めた。
「3千円?」
本来ならば私が彼に伝えるはずの花束代、真純はその値段きっちりと置いていったのだ。
それは偶然の代物ではなかった。パッと見た素人が花の値段なんて分かるはずもないから。


「真純さん、あなたは一体……」


彼は、ただ単に土地ばかりを見ていたのではなかった。今までの私のアレンジを見ていて、この値段をはじき出したのだ。
彼は、自分の技を見ていてくれた……そう思うと、身体に通っていた突っ張りが外れてしまったように思えた。


「どうして、彼が敵なのよ……」


今まで我慢していた気持ちが溢れ出てきた。好きで好きで仕方がない人が敵だなんてあまりにも惨すぎることだった。








第12話へ つづく







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目次

私の彼は副社長

登場人物

~出会い編~
1/ 2/ 3/ 4/ 5/ 6/ 7/ 8/ 9/
10/ 11/ 12/ 13/ 14/ 15/ 16/
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31/ 32/ 33/ 34/ 35/ 36/ 37/
38/ 39/ 40/ 41/ 42/ 43/ 44/
45/ 46/ 47/ 48/ 49/

~真純くんの事情~
1/ 2/ 3/ 4/ 5/ 6/ 7/ 8/ 9/ 10/
11/ 12/ 13/ 14/

~恋人編~
本家サイトにて公開中(R-15)





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